評価制度を導入しているのに、社員から不満が出る。
評価者によって判断がばらつく。
面談が年に数回の「結果を伝える場」になっている。
こうした状態を見ると、制度そのものに問題があるように思えます。
しかし、評価制度が機能しない理由は、評価項目やシートの設計だけにあるとは限りません。
制度の目的、評価基準、日々のマネジメント、処遇や育成とのつながり。
そのどこかが切れていることで、評価が「会社が社員に何を期待しているかを伝える仕組み」ではなく、単なる査定作業になっているケースもあります。
評価制度を見直すときは、制度の形だけではなく、その前後にある運用まで含めて整理することが必要です。
評価制度が「ある」のに、なぜ機能しなくなるのか
評価制度には、給与や昇格を決めるための基準としての役割があります。
一方で、それだけではありません。
会社がどのような成果や行動を期待しているのかを示し、社員が自分の現在地や次に求められることを理解するための仕組みでもあります。
ところが、実際の運用では「評価をつけること」自体が目的になりやすくなります。
半期ごとに目標を書き、期末に点数をつけ、面談をして終わる。
形式としては制度が回っていても、本人にとって「なぜこの評価なのか」「次に何を変えればよいのか」がわからなければ、評価は仕事の改善にはつながりません。
2026年にリクルートマネジメントソリューションズが、従業員300名以上の企業で働く正社員328名を対象に行った調査では、評価制度を「重要」と考える人は62.2%だった一方、「満足している」「とても満足している」と回答した人は合わせて23.2%でした。
また、評価に納得するために望ましい要素として、「評価基準が明確であること」「評価結果が処遇に適切に反映されていること」「評価者によるばらつきが小さいこと」「評価理由が説明されていること」などが挙げられています。
つまり、制度が存在することと、制度が機能していることは別です。
評価制度の問題を考えるときには、まず「何のための評価なのか」「評価によって社員に何を伝えたいのか」という目的に戻る必要があります。
うまくいかない原因は、制度設計より「つながり」にある
評価制度が機能しにくくなる理由はいくつかありますが、共通しているのは、それぞれの要素が切り離されていることです。
一つ目は、経営方針や事業戦略と評価基準がつながっていないケースです。
会社として「挑戦」を大切にすると掲げながら、評価では失敗を避けて安定的に成果を出した人だけが高く評価されるのであれば、社員は制度に書かれている基準より、実際に評価される行動を選ぶようになります。
二つ目は、評価基準と日常の仕事がつながっていないケースです。
「主体性」「協働性」「顧客志向」といった言葉が並んでいても、具体的にどのような行動を指すのかが共有されていなければ、評価者ごとに解釈が変わります。
制度上は同じ基準でも、部署や上司によって評価が異なれば、公平性への疑問が生まれます。
三つ目は、評価とフィードバックが切れているケースです。
半年後に突然「評価はBです」と伝えられても、本人にとっては結果を受け取るだけになってしまいます。
期中に期待や課題について認識を合わせる機会がなければ、上司と部下の間で「できていると思っていた」「そこを見られているとは知らなかった」というズレが起こりやすくなります。
そして四つ目が、評価と処遇・育成がつながっていないケースです。
高い評価を受けても、その後の役割や成長機会に何も変化がなければ、「この評価は何のためにあるのか」という疑問が生まれます。
評価結果を給与だけに結びつける必要はありませんが、次の仕事や育成、配置などにどう生かされるのかが見えなければ、制度の意味は弱くなります。
評価制度がうまく運用されない背景として、制度目的の浸透不足、評価基準の曖昧さ、評価者によるばらつき、処遇や育成との接続不足などは、複数の人事関連情報でも指摘されています。
評価制度を改善するときに見直したい4つのポイント
評価制度に不満があると、評価項目を増やしたり、シートを作り直したりしたくなります。
しかし、制度を細かくするほど運用が複雑になり、かえって形骸化することもあります。
改善するときは、まず4つのポイントを確認してみると整理しやすくなります。
まず、「何を実現するための評価制度か」を明確にします。
処遇を公平に決めたいのか、人材育成につなげたいのか、会社が求める行動を浸透させたいのか。
目的によって、必要な評価項目や面談のあり方は変わります。
複数の目的を持つ場合も、何を優先するのかを決めておくことが重要です。
次に、評価基準を「解釈できる言葉」にします。
抽象的な価値観をそのまま評価項目にするのではなく、自社の仕事ではどのような行動として現れるのかまで整理します。
すべてを数値化する必要はありません。
大切なのは、評価者と被評価者が同じ言葉から大きく異なる状況を想像しない状態をつくることです。
次に、評価者同士の認識をそろえることです。
評価者研修だけでなく、実際の評価事例を持ち寄り、「なぜこの評価なのか」を確認する場を設ける方法もあります。
評価のばらつきを完全になくすことは難しくても、判断の根拠を共有することで、組織としての基準は少しずつ揃っていきます。
最後は、評価を年数回のイベントにしないことです。
日常の1on1や業務上のフィードバックの中で、期待すること、できていること、改善したいことを確認しておけば、期末評価は突然の判定ではなく、それまでの対話を整理する場になります。
実際に、目標設定や評価の根拠を確認するプロセスを見直すことで、評価理由を整理しやすくなり、フィードバックや納得感の改善につながった事例もあります。
評価制度の改善は、評価シートの改訂だけではなく、日常のマネジメントをどう設計するかという問題でもあります。
制度を変える前に、「何がうまくいっていないのか」を特定する
評価制度が機能していないと感じるとき、すぐに制度そのものを刷新する必要があるとは限りません。
問題が評価基準にある場合もあれば、評価者の運用にある場合もあります。
そもそも経営が求める人物像や行動が整理されておらず、評価制度だけでは解決できないケースもあります。
まず確認したいのは、社員がどこに違和感を感じているのかです。
「評価が低かったこと」への不満と、「なぜその評価なのかわからないこと」への不満は、似ているようで改善方法が異なります。
また、評価者側にも「基準が抽象的で判断できない」「部下の仕事を十分に把握できない」「フィードバックの仕方がわからない」といった別の課題があるかもしれません。
そのため、制度改定の前に、評価者・被評価者双方へのヒアリングやアンケートを通じて、どこで認識のズレが起きているのかを整理することが有効です。
制度設計、目標設定、日常の対話、評価判断、フィードバック、処遇への反映という一連の流れを分けて見ると、改善すべき場所が見えやすくなります。
評価制度は、社員を正確に点数化するためだけの仕組みではありません。
会社が何を大切にし、どのような働き方や成長を期待しているのかを伝え、その期待と本人の仕事をすり合わせるための仕組みでもあります。
だからこそ、完璧な制度を一度つくって終わりにするのではなく、事業や組織の変化に合わせて、運用しながら調整していくことが必要です。
制度がうまく機能していないときに問うべきなのは、「どの評価制度が正しいか」ではなく、「自社では、評価を通じて何を実現したいのか」。
その問いが明確になるほど、見直すべき基準や運用も具体的になっていきます。
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