企業サイトをリニューアルするとき、「採用を強化したい」「問い合わせを増やしたい」という要望が同時に挙がることは珍しくありません。
しかし、求職者と顧客では、サイトを見る目的が異なります。
求職者は「ここで働く自分」を想像しようとします。
一方、顧客は「この会社に相談してよいか」を判断しようとします。
そのため、それぞれに必要な情報だけを考えれば、採用サイトと営業向けサイトはまったく別のものにも見えます。
では、ひとつの企業サイトで両方に応えることはできないのでしょうか。
ポイントになるのは、情報を足し合わせることではありません。
採用にも営業にも共通する「この会社は何者なのか」という問いに、サイト全体でどう答えるかを考えることです。
企業サイトは、誰のためにつくるものか
企業サイトをつくるとき、最初に整理したいのは「何を載せるか」ではなく、「誰が、何を確かめるために訪れるのか」です。
たとえば、新しい取引先を探している担当者なら、事業内容や実績、技術力、対応領域などを確認するでしょう。
求人情報を見て会社名を検索した求職者なら、仕事内容だけではなく、会社の考え方や社員の雰囲気、どんな人が働いているのかまで知りたいかもしれません。
ほかにも、既存顧客、協力会社、金融機関、社員の家族など、企業サイトにはさまざまな人が訪れます。
すべての人に同じ情報を見せようとすると、サイトは次第に「会社概要を網羅した場所」になっていきます。
情報は揃っているのに、その会社らしさが見えてこない。
そんな状態にもなりかねません。
そこで考えたいのが、「この会社について、最低限何を理解してもらえれば、その先の判断ができるのか」という視点です。
何をしている会社なのか。
なぜその事業をしているのか。
どのような強みがあるのか。
どんな考え方で仕事をしているのか。
誰が、どのように価値を生み出しているのか。
こうした企業の骨格は、顧客にとっても求職者にとっても重要な情報です。
企業サイトの役割は、訪問者をすぐに問い合わせや応募へ動かすことだけではありません。
その前段階にある「この会社について、もう少し知りたい」「選択肢のひとつとして考えてみたい」という状態をつくることも、大切な役割のひとつです。
採用と営業で必要な情報は違う。でも、根っこは同じ
採用と営業では、サイトを訪れる人の判断基準が異なります。
営業の観点では、「自社の課題を解決できるか」が重要です。
そのため、サービス紹介だけではなく、得意領域、実績、事例、仕事の進め方、他社との違いなどが判断材料になります。
「何を売っているのか」だけでなく、「なぜこの会社に任せるのか」が見えることが必要です。
一方、採用では、「自分がここで働く理由を持てるか」が重要になります。
仕事内容、社員紹介、キャリア、制度、働く環境などに加えて、会社が大切にしている価値観や、日々どのような判断が行われているのかも、企業を選ぶ材料になります。
こうして並べると、営業と採用では別々のコンテンツが必要に見えます。
しかし、もう一段掘り下げると、共通点があります。
たとえば、企業の「強み」。
顧客にとっては、その会社を選ぶ理由になります。
求職者にとっては、その会社で働く意味になります。
企業の「実績」も同じです。
顧客にとっては、仕事を任せられる根拠になる。
求職者にとっては、自分が関われる仕事のスケールや社会への影響を知る材料になる。
「社員」という情報も、採用だけのものではありません。
どのような専門性を持った人が、どのような姿勢で顧客に向き合っているのかが見えれば、それは営業上の信頼にもつながります。
つまり、同じ企業の事実でも、見せ方や文脈によって、採用にも営業にも意味を持たせることができます。
大切なのは、「営業用の情報」「採用用の情報」と最初から切り分けすぎないことです。
まず企業として伝えるべき核を整理し、そのうえで、それぞれの訪問者が判断しやすい入口と導線をつくる。
その順番で考えると、企業サイト全体の一貫性も保ちやすくなります。
採用にも営業にも効くサイトをつくる4つの視点
では、実際に企業サイトを設計するとき、何を考えればよいのでしょうか。
一つ目は、「事業を説明するだけで終わらせない」ことです。
「○○を提供しています」という説明だけでは、似たような企業との差は見えにくくなります。
どのような顧客の、どのような課題に向き合ってきたのか。
何を大切にしてサービスをつくっているのか。
仕事の中で、どこに自社ならではの工夫があるのか。
事業の背景まで伝えることで、その会社の特徴が見え始めます。
二つ目は、「抽象的な強みを、具体的な事実に変える」ことです。
「技術力があります」
「お客様に寄り添います」
「挑戦できる会社です」
こうした言葉自体が悪いわけではありません。
ただ、それだけでは受け手が判断することは難しくなります。
技術力が表れているプロジェクト。
顧客への向き合い方が見えるエピソード。
若手社員に任された仕事。
失敗から改善した出来事。
抽象的なメッセージと具体的な事実をセットにすることで、読み手自身が「確かにそういう会社なのかもしれない」と判断できます。
三つ目は、「人を、採用コンテンツの中だけに閉じ込めない」ことです。
社員インタビューというと、採用ページに置くものだと考えがちです。
しかし、実際の仕事を語る社員の言葉には、サービスページだけでは見えない専門性や仕事への姿勢が表れます。
プロジェクト事例の中に担当者の視点を入れる。
技術紹介で開発者の考えを伝える。
会社の歴史を、その時代を知る社員の言葉から描く。
人を通して事業を見せることで、求職者には働く姿が、顧客には一緒に仕事をする相手の姿が伝わります。
四つ目は、「訪問者ごとの次の行動を設計する」ことです。
企業について理解したあと、顧客ならサービスや事例をさらに見たいかもしれません。
求職者なら社員や仕事内容を知りたいかもしれません。
トップページからすべてを説明しようとするのではなく、関心に応じて次のページへ進める構造をつくる。
企業サイトは、一枚の会社案内ではありません。
訪問者が情報をたどりながら、自分なりにその会社を理解していく場所だと考えると、必要なコンテンツや導線も見えやすくなります。
採用と営業をつなぐのは、「企業理解」という土台
採用サイトと営業サイトを別々に考えると、それぞれに必要なコンテンツを増やすことに意識が向きやすくなります。
しかし、その前に整理したいのは、「自分たちは、どんな会社として理解されたいのか」です。
企業サイトを訪れた人が、 何をしている会社なのか分かる。
他社との違いを自分なりに理解できる。
どのような人たちが働いているのか想像できる。
仕事に対する考え方が見える。
そこまで理解できれば、顧客は「相談してみる」という判断をしやすくなり、求職者は「もう少し知りたい」「働く選択肢として考えたい」と思えるようになります。
もちろん、採用と営業では最終的なゴールは違います。
だからこそ、問い合わせ数や応募数だけを追いかけるのではなく、その手前にある「企業理解」をどのようにつくるかを考えることが重要です。
企業サイトをつくることは、情報をWeb上に並べることではありません。
自社の事業、強み、人、考え方を整理し、訪れる人が自分の目的に沿って理解できる形に編集することです。
「採用にも営業にも効くサイトとは何か」と考え始めたとき、必要なのは、両方に使えそうなコンテンツを増やすことではないのかもしれません。
まず、自社について何を理解してほしいのか。
そこから考えることが、採用と営業のどちらにもつながる企業サイトをつくる出発点になります。
株式会社カラビナは、企業の事業や強み、働く人、価値観を整理し、採用と営業の双方につながる企業サイトの企画・制作を支援しています。
