採用活動を進めていると、「もっと現場を巻き込みたい」という話が出ることがあります。
説明会に社員を呼ぶ。
座談会を開く。
面接官をお願いする。
社員インタビューに出演してもらう。
リファラル採用への協力を求める。
こうした取り組みは、いずれも「現場を巻き込む採用」といえるでしょう。
ただ、現場社員の参加人数やイベントの回数を増やすだけで、採用が強くなるとは限りません。
考えたいのは、なぜ現場社員に関わってもらうのかということです。
採用に強い会社を見ていくと、現場社員を単なる「協力者」として扱うのではなく、人事とは異なる役割を担う存在として採用活動の中に位置づけています。
では、人事と現場は、どのように役割を分ければよいのでしょうか。
人事だけでは、伝えきれない情報がある
採用担当者は、会社全体を俯瞰して説明することができます。
事業内容、制度、福利厚生、選考フロー、キャリア制度、会社として目指している方向。
複数の部署や職種を横断しながら、企業として伝えるべき情報を整理することは、人事だからこそ担いやすい役割です。
一方で、候補者が入社を考えるときに知りたいのは、それだけではありません。
「実際にはどんな一日を過ごすのか」
「仕事の難しいところはどこか」
「チームではどんな会話が交わされているのか」
「忙しいときはどのくらい忙しいのか」
「どんな人が評価されているのか」
こうした情報は、制度ではなく、日々の仕事の中にあります。
2026年卒の学生を対象としたビズリーチ・キャンパスの調査でも、入社先を決める際に影響力が大きかった機会として「現場社員との面談」が45.0%で最も多く挙げられています。
また、仕事内容や事業内容、社風などについては、人事より現場社員から情報を得たいという傾向も示されています。
つまり、現場社員を巻き込む意味の一つは、「会社を魅力的に見せてもらうこと」ではありません。
候補者が自分の働く姿を具体的に想像できる情報を増やすことにあります。
だからこそ、良い部分だけを話してもらう必要もありません。
仕事の難しさや、向いている人・向いていない人、入社前に想像していたこととのギャップ。
そうした少し答えづらい部分まで含めて話せることが、候補者にとっての判断材料になります。
強い会社は、選考が始まる前から現場を巻き込んでいる
「現場社員を巻き込む」と聞くと、説明会や面接への参加を思い浮かべるかもしれません。
しかし、実際にはもっと手前から現場が関われる余地があります。
その一つが、採用要件を考える段階です。
たとえば、「営業経験3年以上」「法人営業経験者」といった条件を決めることはできます。
しかし、それだけでは実際に現場で活躍できる人物像までは見えてきません。
顧客との長期的な関係構築が得意な人なのか。
スピードを求められる環境を楽しめる人なのか。
一人で判断する場面が多いのか、周囲を巻き込む力が重要なのか。
こうした情報は、実際に仕事をしている現場のほうが具体的に持っています。
採用担当と現場がここですり合わせをしておけば、その後の求人原稿、採用サイト、スカウト、説明会、面接で伝える内容にも一貫性が生まれます。
逆に、採用要件を人事だけで決め、選考の途中から現場社員に参加してもらうと、「人事が探している人」と「現場が欲しい人」がずれていることがあります。
人事にとっての採用成功が「採用できたこと」である一方、現場にとっては「入社した人が活躍すること」が重要になる場合もあります。
実際、人事と現場の間には、人材が採用後に力を発揮できているかという点で認識差が生まれることが指摘されています。
だからこそ、現場を巻き込むタイミングは、候補者に会ってからではなく、「誰を採用するのか」を考えるところから始めることができます。
すべてを任せるのではなく、採用フェーズごとに役割を変える
では、現場社員にはどこまで関わってもらえばよいのでしょうか。
全員を採用プロジェクトに参加させたり、すべての面接に現場社員を同席させたりする必要はありません。
重要なのは、採用プロセスのどこで、誰の情報が必要なのかを考えることです。
たとえば、採用要件を設計する段階では、現場の管理職やハイパフォーマーから「実際に活躍している人の共通点」を聞く。
採用広報では、若手社員や中堅社員から仕事の具体的なエピソードを集める。
説明会や座談会では、候補者が自分と重ね合わせやすい社員に参加してもらう。
面接では、実際の業務を理解している社員が、候補者の経験や考え方を仕事と結びつけながら確認する。
内定後には、配属予定部署や近いキャリアを歩んでいる社員と話す機会をつくる。
さらにリファラル採用では、社員自身が「どんな人と働きたいか」を考え、社外の知人へ会社について説明する役割を担うこともあります。
このように考えると、現場社員を巻き込むことは、一つの施策ではありません。
採用要件をつくる。
会社を伝える。
候補者を知る。
入社後を想像してもらう。
それぞれの場面で、人事だけでは持っていない情報を補ってもらうことです。
ただし、そのためには「採用に協力してください」と依頼するだけでは不十分です。
なぜこの社員にお願いするのか。
候補者に何を持ち帰ってほしいのか。
どこまで話してよいのか。
人事は何を担当するのか。
役割が曖昧なままでは、現場社員にとって採用活動は「本業とは別に増えた仕事」になってしまいます。
巻き込みを強めるほど、役割を明確にする必要があります。
「何人巻き込んだか」より、「何を共有できたか」を見る
現場を巻き込む採用というと、社員参加型の大きなプロジェクトを想像する必要はありません。
まず一人の現場社員に、採用要件について30分話を聞くことでも構いません。
説明会の内容を現場社員に見てもらい、「実際の仕事と違って見えるところはないか」と確認するだけでもよいでしょう。
面接後に、「どんな点を見て判断したのか」を人事と現場で共有することもできます。
大切なのは、参加人数ではなく、人事と現場の間で採用についての情報が行き来しているかどうかです。
採用活動には、人事が持っている情報と、現場が持っている情報があります。
そして候補者にも、自分が会社を選ぶために必要としている情報があります。
この三つがうまく交わるほど、企業は自社について具体的に伝えやすくなり、候補者も「入社するかどうか」を自分で判断しやすくなります。
現場を巻き込む目的は、採用活動を全社員の仕事にすることではありません。
候補者と企業の双方が、入社後の姿まで想像したうえで判断できる状態をつくることです。
自社の採用を振り返るときも、「社員をもっと巻き込めないか」と考える前に、「いまの採用活動では、誰が持っている情報が足りていないのか」と考えてみるとよいかもしれません。
そこが見えてくれば、必要な社員も、関わってもらうタイミングも、おのずと変わってきます。
株式会社カラビナは、採用戦略や採用広報の設計から、現場社員を巻き込んだコンテンツ制作・採用コミュニケーションまで、企業ごとの採用課題に合わせて伴走しています。
