求人を出したのに、思うように応募が集まらない。
そんなとき、「この求人媒体は自社に合っていないのでは」「もっと知名度のある媒体に変えたほうがいいのでは」と考えるのは自然なことです。
実際、媒体選びは採用成果を左右する要素のひとつです。
求める人材がほとんど利用していない媒体に掲載していれば、そもそも求人を見てもらう機会が生まれません。
ただし、応募が来ない理由を媒体だけに求めると、本来見直すべき課題を見落としてしまうことがあります。
採用は、「求人が表示される」「興味を持って読まれる」「会社や仕事を理解する」「応募を決める」という複数の段階を経て進みます。
つまり、応募数が少ないという結果だけを見ても、どの段階に原因があるのかは分かりません。
たとえば、求人の表示回数そのものが少なければ、媒体や掲載方法の問題を疑えます。
一方で、表示されているのにクリックされない場合と、求人詳細まで読まれているのに応募されない場合では、見直すべき場所は違います。
前者ならタイトルや条件の見え方、後者なら仕事内容の伝わり方や応募への不安などが関係しているかもしれません。
媒体を変える前に、自社の採用活動をいくつかの要素に分けて確認してみる。そのほうが、次に何を変えるべきかを判断しやすくなります。
「誰から応募が来てほしいか」が具体的になっているか
最初に確認したいのは、採用ターゲットです。
「営業経験のある人」「主体性のある人」「コミュニケーション能力が高い人」。
こうした条件は間違いではありませんが、それだけでは、実際にどのような人に来てほしいのかが曖昧なままです。
たとえば同じ営業職でも、新規開拓を楽しめる人と、既存顧客との関係構築を得意とする人では、仕事選びで重視することが違います。
裁量の大きさに魅力を感じる人もいれば、教育体制やチームで働ける安心感を重視する人もいます。
採用ターゲットが曖昧な状態では、求人媒体を選ぶ基準も、求人票で何を伝えるべきかも決めにくくなります。
結果として、「幅広い人に届くように」と情報を並べたものの、誰にも強く響かない求人になってしまうことがあります。
ここで考えたいのは、応募者の条件だけではありません。
「どんな経験をしてきた人か」
「転職で何を変えたいと考えていそうか」
「自社のどんな環境なら、その人にとって意味があるか」
ここまで想像してみると、求人の見え方も変わってきます。
たとえば「若手を採用したい」という場合でも、初めて転職する20代と、すでに複数社を経験している20代では、仕事に求めるものは同じとは限りません。
未経験者を採用したいのであれば、仕事内容以上に、教育体制や入社後のステップが応募判断に影響することもあります。
そのうえで媒体を見ると、「利用者数が多いか」だけではなく、「会いたい人がそこにいるか」という視点で選べるようになります。
媒体そのものの良し悪しではなく、採用ターゲットとの相性を判断する、という考え方です。
求人票から「ここで働く自分」を想像できるか
次に見直したいのが、求人票の内容です。
給与、勤務地、休日、福利厚生、応募資格。
求人には欠かせない情報ですが、条件が並んでいるだけでは、求職者が「自分がこの会社で働く姿」まで想像するのは難しいものです。
たとえば「法人営業」と書かれていても、誰に何を提案するのか、新規と既存の割合はどの程度なのか、チームで進めるのか個人で動くのかによって、仕事の印象は大きく変わります。
「風通しの良い職場」「若手が活躍」「裁量の大きな環境」といった言葉も、多くの求人で目にします。
ただ、それだけでは実際の働き方までは分かりません。
そこで重要になるのが、抽象的な魅力を、仕事の具体的な場面に置き換えて伝えることです。
入社後、最初の数か月は何をするのか。どんな人と働くのか。仕事の難しさはどこにあるのか。その仕事だから得られる経験は何か。活躍している社員は、どのような点に面白さを感じているのか。
こうした情報があることで、求職者は初めて「自分にもできそうか」「自分が求めている環境か」を考えられます。
もちろん、良い面だけを書く必要はありません。
忙しい時期や難しい仕事があるなら、それも含めて伝えたほうが、求職者は自分に合うかどうかを判断しやすくなります。
応募数を増やすことだけを目標にすると、魅力的に見せることへ意識が偏りがちです。
しかし、本来必要なのは「応募したくなる情報」と「応募するか判断できる情報」の両方です。
求人票を見直すときは、競合求人と給与や休日だけを比べるのではなく、「仕事内容をどこまで具体的に伝えているか」「働く人の姿が見えるか」「入社後を想像できるか」といった点も横並びで見てみると、自社に不足している情報が見えやすくなります。
「知る」から「応募する」までに迷いがないか
求人媒体上の情報が十分でも、応募につながらないことがあります。
求職者は、求人票だけを見て応募を決めるとは限りません。
気になった会社名を検索し、企業サイトや採用サイト、社員紹介、SNS、口コミなどを見ながら、「どんな会社なのか」「本当に自分に合いそうか」を確認することがあります。
このとき、媒体では「挑戦できる会社」と書かれているのに、採用サイトでは仕事内容がほとんど分からない。社員紹介はあるものの、実際の仕事ぶりが見えてこない。募集要項にたどり着きにくい。応募フォームの入力項目が多い。
こうした一つひとつは小さなことでも、迷いが重なると、せっかく生まれた興味が応募までつながらない可能性があります。
だからこそ、応募が来ないときは「応募数」だけを見るのではなく、その手前の数字も確認したいところです。
そもそも求人は表示されているのか。
表示されているならクリックされているのか。
求人ページは見られているのに応募されていないのか。
表示自体が少ないなら、媒体や掲載条件、職種名の見直しが必要かもしれません。
表示されているのにクリックされないなら、求人タイトルや条件の見え方に課題がある可能性があります。
ページは読まれているのに応募されないなら、情報不足や応募への不安、導線の分かりにくさを疑うことができます。
重要なのは、「応募が来ない」という一つの結果を、そのまま一つの原因に結びつけないことです。
求人媒体を変えることが有効な場合もあります。
ただ、その判断は、自社の採用ターゲット、求人情報、応募までの導線を確認したうえで行ったほうが、理由のある選択になります。
媒体を変える。求人票を書き直す。採用サイトを整える。条件を見直す。どれも採用改善の選択肢です。
だからこそ、最初に必要なのは新しい施策を増やすことではなく、「候補者がどこで止まっているのか」を把握することなのかもしれません。
応募が来ないとき、その原因は媒体にあるのか。それとも、ターゲットや伝え方、応募までの体験にあるのか。
自社の採用を一度分解してみることで、次に見直すべき場所が少し具体的に見えてきます。
株式会社カラビナは、企業や仕事の魅力を整理し、採用ターゲットに届く言葉や情報設計、採用サイトなどのコミュニケーションづくりを支援しています。
