「せっかく採用したのに、数カ月で辞めてしまった」
「面接では活躍してくれそうに見えたのに、入社すると合わなかった」
採用ミスマッチが起きると、面接のやり方を見直したくなるものです。
質問項目を変える。
面接官をトレーニングする。
適性検査を導入する。
採用基準を細かく定める。
もちろん、どれも重要な取り組みです。
ただ、ミスマッチが起きた原因を「面接で見極められなかったから」と考えるだけでは、見落としてしまうものがあります。
候補者は、面接を受ける前からその会社に対するイメージを持っています。
求人票を読む。
採用サイトを見る。
社員インタビューを読む。
SNSを見る。
説明会に参加する。
そうした情報から、「この会社では、こんな仕事ができそうだ」「こんな人たちと働けそうだ」「自分に合っていそうだ」という期待をつくったうえで、選考に進んできます。
だとすれば、採用ミスマッチを考えるときに見るべきなのは、面接だけではありません。
その前に、企業が何を発信し、候補者にどのような期待をつくっているのか。
そこから考えてみる必要があります。
ミスマッチは、入社後ではなく応募前から始まっている
採用ミスマッチというと、入社後に発覚するものという印象があります。
「想像していた仕事内容と違った」
「思っていたより個人で動く会社だった」
「若手から挑戦できると聞いていたが、実際には任されるまで時間がかかった」
こうした違和感が表面化するのは、たしかに入社後です。
しかし、そのズレの起点はもっと前にあります。
たとえば、採用サイトに「若手から活躍できる会社」と書かれていたとします。
企業側は、「年次に関係なく意見を言える」という意味で使っているかもしれません。
一方、候補者は、「入社直後から大きな案件を任せてもらえる」と受け取るかもしれない。
どちらが間違っているわけでもありません。
問題は、「若手から活躍」という言葉だけでは、実際の働き方まで伝わっていないことです。
「風通しが良い会社」
「裁量の大きな環境」
「成長できる職場」
「アットホームな社風」
採用では、こうした言葉がよく使われます。
ただし、抽象的な言葉ほど、受け手が自分なりに意味を補います。
すると、企業が伝えたつもりのイメージと、候補者が受け取ったイメージの間に少しずつズレが生まれます。
入社後の「思っていたのと違う」は、入社後に突然発生するわけではありません。
応募前から積み重なった小さな解釈の違いが、働き始めて初めて見える形になったもの、と考えることもできます。
面接で見極められるのは、すでに集まってきた人だけ
では、面接を改善すればミスマッチは防げるのでしょうか。
ある程度は可能でしょう。
仕事内容に対する理解を確認する。
仕事で大切にしている価値観を聞く。
過去の行動から、自社との相性を考える。
面接は、企業と候補者が互いを理解するための大切な場です。
ただし、面接にはひとつ前提があります。
面接できるのは、「すでに応募してきた人」だけだということです。
たとえば、自社では、一人ひとりが自分で仕事を見つけて動くことを大切にしているとします。
細かな指示を受けながら仕事をしたい人よりも、自分で考えて動くことを好む人のほうが働きやすい会社かもしれません。
ところが採用サイトで、「社員同士の仲が良い」「チームワークを大切にしている」という情報ばかりを発信していたらどうでしょう。
候補者は、手厚く周囲と連携しながら働く環境を想像するかもしれません。
その状態で応募が集まり、面接になってから初めて、「実は、かなり自律性が求められます」と説明することになります。
これでは、面接官が候補者を見極める以前に、そもそも発信と実態の間にズレがあります。
採用活動では、「誰を選ぶか」に目が向きがちです。
しかし、その前には「誰が自社に興味を持つか」という段階があります。
面接が選考の仕組みだとすれば、採用発信は応募者の集まり方をつくる仕組みとも言えます。
発信する情報が変われば、応募してくる人も変わる。
そう考えると、採用ミスマッチへの対策は、面接室に入る前から始まっています。
発信で伝えるべきは「魅力」ではなく「判断材料」
では、採用発信では何を伝えればいいのでしょうか。
ここで注意したいのが、「会社の悪いところまで全部さらけ出せばよい」という話ではないことです。
重要なのは、候補者が自分に合う会社かどうかを判断できるだけの具体性を持たせることです。
たとえば、
「裁量が大きい」
と伝えるのであれば、
入社何年目くらいから、どの程度の仕事を任されるのか
上司からはどこまで指示があるのか
自分で判断することと、確認が必要なことは何か
まで見えると、働き方を想像しやすくなります。
「チームワークが良い」
なら、
普段どのように情報共有しているのか
一人で進める仕事とチームで進める仕事の割合はどうか
意見がぶつかったときに、どのように意思決定するのか
まで伝える。
仕事内容についても同じです。
成功したプロジェクトだけではなく、日常業務も見せる。
華やかな仕事だけではなく、その裏にある地道な作業も見せる。
キャリアの可能性だけではなく、そこに至るまでの時間や経験も伝える。
魅力を減らすのではありません。魅力を具体化するのです。
「とにかく応募してもらう」ことを目的にすると、発信はどうしても魅力的な情報へ偏ります。
一方、「候補者に自分で選んでもらう」ことまで目的にすると、必要な情報は変わってきます。
候補者を限定する発信は、一見すると機会損失に見えるかもしれません。
しかし採用ミスマッチという視点で見れば、自社に合わないと判断できることも、採用発信が果たすひとつの役割です。
採用広報は、応募数を増やすためだけのものではない
採用サイトや求人広告について考えるとき、「どうすれば応募が増えるか」という問いは避けられません。
もちろん、候補者に興味を持ってもらえなければ採用活動は始まりません。
ただ、応募数だけをゴールにすると、企業はできるだけ多くの人に好かれる表現を選びやすくなります。
その結果、
「挑戦できる」
「成長できる」
「人がいい」
「働きやすい」
といった、誰にとっても魅力的に聞こえる言葉が並びます。
しかし、採用において大切なのは、すべての人に魅力的に見えることではありません。
ある人には魅力的で、別の人には「自分には違うかもしれない」と感じられる。
そのくらい輪郭があるほうが、企業と候補者の双方にとって判断しやすい情報になることがあります。
面接で初めて会社の実態を説明するのではなく、その前から候補者が十分な情報を持っている状態をつくることが重要です。
面接では、その情報を前提に、
「この環境をどう感じましたか」
「こういう働き方は自分に合いそうですか」
「どこに違和感がありますか」
と、もう一段深い対話ができるようになります。
採用は、企業が人を見極めるだけの場ではありません。
候補者もまた、企業を選んでいます。
だからこそ、採用発信の役割は「魅力を伝えて応募させること」だけではなく、「自分に合うかどうかを考えられる状態をつくること」なのではないでしょうか。
採用ミスマッチが続いているとき、見直すべきなのは面接の質問だけではないかもしれません。
応募者に何を聞いているかの前に、自社が何を伝えているのか。
そこに目を向けると、採用の改善点が少し違って見えてきます。
株式会社カラビナは、企業らしさや仕事の実態を整理し、候補者が自分で判断できる採用発信の設計を支援しています。
