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インナーブランディングは“社員向け施策”ではない

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インナーブランディングは“社員向け施策”ではない

インナーブランディングという言葉から、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

社内報をつくる。

理念を伝えるイベントを開く。

クレドカード(MVV=ミッション・ビジョン・バリューが書いてあるカード)を配る。

周年を機にパーパスやMVVを改めて共有する。

たしかに、これらはインナーブランディングの代表的な取り組みです。

そのため、「社員に向けて行う施策」という理解も、間違いではありません。

ただし、ここには一つ注意したいことがあります。

インナーブランディングの「対象」は社員ですが、その「目的」まで社内に閉じているわけではない、ということです。

社員に理念を知ってもらうことそのものがゴールになってしまうと、インナーブランディングは、ともすると社内イベントやコミュニケーション施策の一つとして捉えられてしまいます。

では、本来は何を目指すものなのでしょうか。

社員に何かを「伝える」という視点から少し離れ、会社のブランドと日々の事業活動との関係から考えてみます。

「社員に伝えること」をゴールにすると、何が抜け落ちるのか

インナーブランディングでは、企業理念やパーパス、MVVなどを社員へ共有することがよくあります。

しかし、社員が理念を覚えていることと、その会社らしい仕事ができていることは、必ずしも同じではありません。

たとえば、「お客様に誠実である」という価値観を掲げている会社があったとします。

社員全員がその言葉を知っていたとしても、実際の仕事ではどうでしょうか。

納期と品質のどちらを優先するのか。

顧客から想定外の要望を受けたとき、どこまで対応するのか。

短期的な売上につながる提案と、本当に顧客のためになる提案が異なったとき、どちらを選ぶのか。

こうした場面で「自社ならどう判断するか」が共有されていることのほうが、理念を暗記していることよりも重要かもしれません。

理念や価値観は、掲げるだけではブランドにはなりません。

経営判断や商品開発、営業、接客、採用、マネジメントなど、日々のさまざまな場面で選択の基準となり、その積み重ねが外から見える企業の姿をつくっていきます。

そう考えると、インナーブランディングで問うべきなのは、「社員に伝わったか」だけではありません。

「その考え方が、仕事の中で使われているか」

ここまでを見ることで、インナーブランディングの捉え方は少し変わってきます。

社内で共有された価値観は、顧客体験として社外へ現れる

ブランドという言葉は、ロゴや広告、Webサイトなど、企業が外へ発信するものと結びつけて考えられがちです。

しかし、顧客が企業のブランドを感じる場所は、広告だけではありません。

営業担当者との会話、店舗での接客、問い合わせへの返信、商品の使いやすさ、トラブルが起きたときの対応。

企業と接するさまざまな場面から、「この会社はこういう会社なのだろう」という印象はつくられていきます。

そして、その接点の多くをつくっているのは社員です。

たとえば、「挑戦する会社」というメッセージを広告では大きく掲げていても、社内では失敗を強く責める文化があれば、社員が新しい提案を避けるようになるかもしれません。

「お客様を第一に考える」と掲げながら、社内の評価制度が短期的な売上だけを重視していれば、現場では理念とは異なる判断が合理的になることもあります。

逆に、企業が大切にしている価値観と、社員が日々の仕事で求められる判断がつながっていれば、その一貫性は自然と顧客との接点にも現れていきます。

つまり、インナーブランディングとアウターブランディングは、完全に別々のものではありません。

外に何を約束するのか。

内側では何を大切にして働くのか。

実際の仕事では、どのような価値を提供するのか。

この三つがつながっている状態をつくることが、ブランドを育てるうえでは重要になります。

インナーブランディングは、そのうちの「内側だけ」を担当するものというより、内側と外側をつなぐ役割を持っていると考えたほうが実態に近いでしょう。

「何をやるか」より先に、「何につなげたいか」を考える

インナーブランディングを検討するとき、「どんな施策をやればいいか」という話から始まることがあります。

社内報、ブランドブック、ワークショップ、社内イベント、動画、表彰制度、1on1など、選択肢は数多くあります。

ただ、施策そのものから考え始めると、「ブランドブックはつくったが読まれない」「イベント直後は盛り上がったが、その後は元に戻った」といったことも起こりやすくなります。

そこで一度、「なぜインナーブランディングをするのか」まで戻って考えてみる必要があります。

たとえば、会社によって課題は異なります。

事業が急拡大し、部署によって判断基準がばらばらになっている。

企業理念はあるものの、社員から「自分の仕事との関係がわからない」という声が出ている。

採用では魅力的なメッセージを発信しているものの、入社後にギャップが生まれている。

複数の会社が統合し、一つの会社として大切にするものを整理する必要がある。

新しい中期経営計画を発表したものの、現場の行動まで結びついていない。

課題が違えば、必要なインナーブランディングも変わります。

理解を促すことが必要な会社もあれば、社員同士で価値観について話す機会が必要な会社もあるでしょう。

評価制度やマネジメントのあり方まで見直さなければ、行動が変わらないケースもあります。

だからこそ、「社内報をつくるべきか」「ワークショップをするべきか」という問いは、本来もう少し後に出てくるものです。

先に考えたいのは、

「いま、組織のどこにズレがあるのか」

「社員にどのような判断ができるようになってほしいのか」

「その結果、事業や顧客にどのような価値を届けたいのか」

という問いです。

その答えによって、必要な施策は変わります。

インナーブランディングを「社内で完結させない」という考え方

インナーブランディングは、社員に向けて行うものです。

その意味では、「社員向け施策」という表現自体が間違っているわけではありません。

ただ、「社員向けだから、社内の話」と考えてしまうと、本来見たいはずの成果が見えにくくなります。

社員が会社の価値観を理解する。

その価値観を、自分の仕事に置き換えて考えられる。

日々の判断や行動に反映される。

その結果として、商品やサービス、顧客対応、採用活動などに一貫性が生まれる。

そして、社外の人が接する企業の姿にも、その会社らしさが現れていく。

こうして考えると、インナーブランディングは「内側をよくするための活動」というより、「内側からブランドをつくる活動」と表現したほうがわかりやすいかもしれません。

だからこそ、その成果を考えるときも、「社員の理念理解度が上がったか」だけを見る必要はありません。

現場で判断に迷う場面が減ったか。

部署をまたいでも大切にする基準が共有されているか。

採用で伝えている会社像と、入社後の体験にズレがないか。

顧客が接するさまざまな場面に、その会社らしさが感じられるか。

見るべきものは、会社の課題によって変わります。

インナーブランディングに取り組むときには、「社員に何を伝えるか」から始めるのではなく、「この会社は、どんな価値を社会や顧客に届けたいのか」から逆算してみる。

そうすると、社内報をつくることも、理念について対話することも、制度を見直すことも、それぞれが単独の施策ではなく、一つのブランドをつくるための手段として見えてきます。

インナーブランディングは、社員に向けて行う。けれど、その先にいるのは社員だけではない。

その視点を持つことが、自社にとって何が必要なのかを考える一つの判断軸になるのではないでしょうか。

株式会社カラビナは、企業の理念や価値を、社内で共有する言葉にとどめず、日々の判断や行動、顧客体験へつなげていくインナーブランディングを支援しています。

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