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「いい人がいたら採りたい」が採用を難しくする理由

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「いい人がいたら採りたい」が採用を難しくする理由

「今すぐ人手が足りないわけではないけれど、いい人がいたら採用したい」


採用活動の方針を考える場面で、こうした言葉を聞くことがあります。

採用人数を無理に増やさず、自社に合う人材との出会いを大切にする。

そんな慎重な姿勢が表れた言葉ともいえるでしょう。


一方で、この「いい人」という言葉が、採用活動を難しくしている場合もあります。


応募者は集まっているのに、なかなか採用が決まらない。

面接官によって評価が分かれる。

採用した人材が、入社後に期待したほど活躍できない。


こうした課題の背景には、採用市場の変化だけでなく、企業自身が「どんな人を必要としているのか」を十分に整理できていない可能性があります。


「いい人がいたら採りたい」という考え方は、なぜ採用を難しくするのでしょうか。

採用基準や求める人物像の考え方を整理しながら、自社に必要な人材を見極めるための視点を考えます。



・「いい人」の定義が曖昧なまま、採用活動が進んでいないか


「いい人」と聞いて、どのような人物を思い浮かべるでしょうか。


仕事ができる人。

コミュニケーション能力が高い人。

主体性がある人。

周囲と協力できる人。

会社の価値観に共感してくれる人。


どれも魅力的な要素ですが、すべての条件を高い水準で満たす人材を探そうとすると、採用のハードルは高くなります。


また、何をもって「いい人」とするかは、立場によって異なります。


例えば、営業部門の管理職は、すぐに売上へ貢献できる経験豊富な人材を求めているかもしれません。

一方、人事担当者は、長期的に成長し、組織に定着してくれる人材を重視しているかもしれません。

経営者は、将来の事業展開を見据え、新しい視点を持ち込んでくれる人材を期待している可能性もあります。


それぞれの考え方に間違いがあるわけではありません。


問題は、こうした期待の違いが整理されないまま、採用活動が進んでしまうことです。


面接で高く評価された応募者が、別の面接官からは評価されない。

選考が進むほど判断に迷いが生まれ、最終的には「何となく決め手に欠ける」という理由で見送りになる。

このような状況では、採用担当者が努力しても、採用の成果につながりにくくなります。


さらに、求める人物像が曖昧であることは、応募者とのコミュニケーションにも影響します。


企業がどのような仕事を任せたいのか、どのような能力を評価するのかが明確でなければ、応募者も自分がその企業で活躍できるかを判断しにくくなります。


採用とは、企業が人材を選ぶだけでなく、応募者が企業を選ぶ活動でもあります。


だからこそ、「いい人」を探す前に、自社にとっての「いい人」が何を意味するのかを考える必要があります。



・理想の人物像を追い求めるほど、採用の選択肢が狭くなる


求める人物像を明確にすることは重要です。

しかし、理想を細かく設定すればするほど、採用がうまくいくとは限りません。


例えば、中途採用で営業職を募集する企業があったとします。


「同業界での営業経験が5年以上あり、新規開拓にも既存顧客への提案にも強く、マネジメント経験があり、自社の文化にも合う人材」


こうした条件を設定すれば、確かに理想的な人物像は描けます。


しかし、そのすべてが本当に必要な条件でしょうか。


営業経験は必要でも、同業界である必要はないかもしれません。

マネジメント経験は、入社後に身につけてもらうことができるかもしれません。

既存顧客との関係構築に強みがある人材なら、新規開拓の経験が少なくても活躍できる可能性があります。


重要なのは、条件を増やすことではなく、条件の意味を考えることです。


採用要件を整理する際には、業務内容を具体化したうえで、必須となる条件と、あれば望ましい条件を分ける考え方があります。


採用要件は、大きく次の3つに分けて考えることができます。


・入社時点で必要な能力や経験

・入社後に育成できる能力や経験

・将来的に期待する役割や成長


この3つを区別するだけでも、採用対象となる人材の幅は変わってきます。


例えば、即戦力を必要としているのであれば、一定の経験や専門性を重視することには合理性があります。

一方、数年後の事業拡大を見据えた採用であれば、現在のスキルだけでなく、学習能力や成長の可能性を評価することも考えられます。


また、「自社に合う人材」という条件にも注意が必要です。


企業文化への適応を重視するあまり、既存社員と似た経歴や考え方の人ばかりを評価してしまうと、組織に新しい視点が入りにくくなる可能性があります。


協働するために必要な行動特性と、単に考え方や雰囲気が似ていることは、必ずしも同じではありません。


自社に必要なのは、今いる社員と似た人なのか。

それとも、今の組織にはない能力や視点を持つ人なのか。


理想の人物像を考える際には、こうした問いも欠かせません。



・採用基準を明確にするために、何から考えるべきか


では、採用基準を明確にするには、どのような整理が必要なのでしょうか。


最初に考えたいのは、「どんな人を採りたいか」ではなく、「なぜ人を採用するのか」という問いです。


例えば、同じ営業職の採用でも、背景にある課題によって必要な人材は異なります。


既存顧客への対応が追いついていないのであれば、顧客との関係構築や業務遂行の正確さが重要になるかもしれません。


新規事業を拡大したいのであれば、未知の市場に対して仮説を立て、試行錯誤できる能力が求められるかもしれません。


将来の管理職候補を育成したいのであれば、現時点での営業成績だけでなく、周囲を支援する姿勢や、組織全体を捉える視点も評価対象になるでしょう。


つまり、採用基準は、事業や組織の課題と結びついている必要があります。


整理する際には、次の4つの問いが役立ちます。


① なぜ、今この人材が必要なのか


人員不足を補いたいのか、新しい事業を始めたいのか、組織の将来を担う人材を育てたいのか。


採用の目的が違えば、求める能力や経験も変わります。


② 入社後、どのような役割を期待するのか


担当する業務だけでなく、誰と協働し、どのような成果を期待するのかを具体的にします。


「主体性がある人」という抽象的な条件も、「課題を発見し、周囲と相談しながら改善を進められる人」と言い換えることで、評価すべき行動が見えやすくなります。


③ 何が必須で、何を育成できるのか


必要な条件をすべて入社時点で求めるのではなく、育成体制や業務の実態を踏まえて優先順位をつけます。


同時に、現在の社員がどのような経験を通じて成長してきたのかを振り返ることも参考になります。


④ どのような根拠で評価するのか


求める能力を整理しても、それを選考で確認できなければ、採用基準として十分に機能しません。


例えば、課題解決力を重視するなら、過去に直面した課題と、その際に取った行動を具体的に聞く方法があります。


厚生労働省も、公正な採用選考のために、職務遂行に必要な適性・能力に基づいて採用基準を事前に明確化することを推奨しています。


採用基準は、応募者を一方的にふるいにかけるためのものではありません。


企業が必要な人材を見極めると同時に、応募者が自分の能力を適切に伝えられるようにするためのものでもあります。


そのため、採用担当者だけで基準を決めるのではなく、経営層や配属予定部門と認識を共有することが重要です。



4. 「いい人を探す採用」から「必要な人材と出会う採用」へ


採用活動がうまくいかないとき、応募者の数や採用媒体、求人情報の内容を見直すことは自然な対応です。


しかし、求める人物像が曖昧なままでは、応募者が増えても、採用の判断が難しい状況は変わらないかもしれません。


一方で、採用基準を明確にすることは、条件に合わない人を排除することだけを意味するものではありません。


むしろ、自社に必要な能力や経験を整理することで、これまで見落としていた人材の可能性に気づける場合があります。


例えば、業界経験を重視していた企業が、実際には顧客との信頼関係を築く力を必要としていると気づけば、異業種で活躍してきた人材も採用対象になるかもしれません。


また、即戦力を求めていた企業が、入社後の育成体制を見直すことで、経験の浅い人材にも選択肢を広げられる可能性があります。


採用基準を明確にすることは、必ずしも採用の間口を狭めることではないのです。


さらに、求める人物像が明確になると、企業が発信すべき情報も変わってきます。


どのような仕事に取り組めるのか。

どのような能力を発揮できるのか。

どのような成長機会があるのか。


採用サイトや求人情報、社員インタビューなどで伝えるべき内容を、採用の目的と結びつけて考えられるようになります。


これは、採用ブランディングを考えるうえでも重要な視点です。


自社の魅力を幅広く伝えることだけでなく、必要とする人材に対して、その人が知りたい情報を届けること。

企業と応募者の双方が、入社後の働き方を具体的に想像できる状態をつくること。


そうした情報発信が、採用における相互理解を支えます。


もちろん、採用基準を明確にしたからといって、必ず採用が成功するわけではありません。

市場環境や労働条件、選考体験など、採用の結果を左右する要素はほかにもあります。


また、事業環境や組織の状況が変われば、必要な人材も変化します。

採用基準は、一度決めたら終わりではなく、採用活動や入社後の状況を振り返りながら見直していくものです。


「いい人がいたら採りたい」という言葉そのものが、悪いわけではありません。


大切なのは、その「いい人」が、どのような役割を担い、何を実現するために必要なのかを説明できることです。


採用活動を見直すときには、応募者を増やす方法を考える前に、一度、自社の採用基準を振り返ってみてはいかがでしょうか。


「どんな人がほしいのか」という問いの先にある、「その人と何を実現したいのか」という問い。


そこから、採用の新しい選択肢が見えてくるかもしれません。


株式会社カラビナは、企業の事業や組織の課題を踏まえた採用コンセプトの設計から、求める人材に伝わる採用サイトや採用ツールの制作まで、採用ブランディングを支援しています。


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