採用活動で応募者が集まらないとき、多くの企業がまず考えるのは「どうすれば応募数を増やせるか」ではないでしょうか。
求人媒体を増やす。
スカウトの送信数を増やす。
採用サイトを見直す。
募集条件を変える。
母集団形成のためにできることは、もちろんあります。
ただ、応募者が少ない会社ほど、もう一つ見落としたくないものがあります。
それが、応募してくれた人がその後どのような体験をしているか、という視点です。
応募数が少ない状態では、一人ひとりの応募者の重みが相対的に大きくなります。
せっかく接点を持てた候補者が、日程調整のしづらさや連絡の遅さ、面接での違和感によって離脱してしまえば、その影響は決して小さくありません。
応募者を増やすことと、応募してくれた人が選考を続けたいと思える状態をつくること。
この二つは別の課題です。
応募が少ないときこそ、後者も同時に見直す必要があります。
応募が少ないとき、「集めること」だけが課題とは限らない
採用を一つの流れとして見ると、「認知→興味→応募→選考→内定→承諾→入社」と、いくつもの段階があります。
応募数が少なければ、認知や求人の魅力、採用チャネルに課題がある可能性はあります。
しかし、採用できない理由が必ずしも応募数だけにあるとは限りません。
たとえば、10人の応募者のうち8人が途中で辞退している会社と、10人のうち2人しか辞退していない会社では、同じ応募数でも採用につながる可能性は大きく異なります。
ここで考えたいのは、「応募者が少ない」という事実と、「採用につながらない」という結果を、そのまま同じ問題として扱わないことです。
応募前に離脱しているのか。
応募後、面接までに離脱しているのか。
一次面接の後なのか。内定後なのか。
どこで候補者が離れているかによって、必要な対策は変わります。
応募が少ないからといって、入り口だけを広げ続けても、その先の選考体験に大きな摩擦が残っていれば、採用成果は伸びにくいままです。
むしろ応募者が限られている会社ほど、「せっかく出会えた候補者との接点をどう生かすか」という視点を持つことが重要になります。
応募者が少ないほど、一人の離脱が採用成果に響きやすい
応募が十分に集まっている企業であれば、ある程度の選考辞退が発生しても、次の候補者がいるかもしれません。
一方で、応募者が少ない企業では、一人の辞退が採用計画そのものに影響することがあります。
だからといって、すべての応募者に入社してもらうことを目指す必要はありません。
採用では、企業と候補者がお互いに合うかどうかを判断することも大切だからです。
問題なのは、本来なら十分に検討してもらえた候補者が、「会社のことが分からなかった」「選考の進み方が見えなかった」「自分に向き合ってもらえなかった」といった、仕事や組織との相性とは別の理由で離れてしまうことです。
選考体験を磨く目的は、候補者を強く口説き込むことではありません。
候補者が、自分に合う会社かどうかを判断するために必要な情報と対話を用意することです。
たとえば、面接の日程候補が極端に少ない、質問への返信に時間がかかる、面接官によって説明内容が大きく異なる、仕事内容を聞いても抽象的な回答しか返ってこない。
こうした小さな違和感は、一つひとつは致命的でなくても、選考を続ける理由を弱くしていきます。
特に知名度が高くない会社や、仕事内容が一般に理解されにくい会社、勤務地などの条件面で候補者が限られる会社では、応募時点で志望度が十分に高いとは限りません。
だからこそ、選考は「志望度が高い人を見極める場」であるだけでなく、「候補者が会社を理解し、志望するかどうかを考える場」でもあります。
良い選考体験は、「感じがいい選考」とは少し違う
選考体験を良くするというと、面接官が優しく接する、連絡を丁寧にする、オフィスをきれいに見せる、といった「好印象をつくること」が想像されやすいかもしれません。
もちろん、配慮のある対応は大切です。
ただ、それだけでは十分とは言えません。
候補者にとって良い選考体験とは、企業について理解でき、自分自身についても適切に伝えられ、選考結果にかかわらず「判断するための材料が得られた」と感じられる体験です。
そのためには、まず選考の目的を明確にする必要があります。
一次面接では何を確かめるのか。
候補者には何を知って帰ってもらうのか。
二次面接では誰と会うことで、どんな情報を補うのか。
最終面接までに、仕事内容、期待される役割、組織の文化、働き方、難しさなどを十分に伝えられているか。
選考の各段階に役割がなければ、候補者にとっては「似たような質問を何度もされる時間」になりかねません。
また、魅力だけを並べることも、必ずしも良い体験とは限りません。
仕事の大変さや組織の課題、入社後に求められることも含めて伝えた方が、候補者は自分との相性を考えやすくなります。
大切なのは、ポジティブな情報を増やすことではなく、判断に必要な情報の解像度を上げることです。
選考体験を「おもてなし」と捉えるのではなく、「双方が判断しやすい状態をつくる設計」と捉えると、改善すべきポイントも見えやすくなります。
まずは「どこで離れているか」から選考を見直す
選考体験を改善しようとしても、すべてを一度に変える必要はありません。
最初に確認したいのは、応募から入社までのどこに離脱が集中しているかです。
応募後に面接設定まで進まないのであれば、初回連絡の速度や日程調整の方法に負担がないか。
一次面接後の辞退が多いのであれば、面接で何を伝えているか、候補者の疑問に答えられているか。
内定辞退が多いのであれば、選考中に仕事内容や期待役割、条件について十分な認識合わせができていたか。
辞退率だけでなく、「応募から初回連絡までの日数」「面接間の期間」「候補者からよく出る質問」「辞退理由」などを並べるだけでも、選考の摩擦は見えやすくなります。
可能であれば、入社者だけではなく、辞退者や不採用者の声にも目を向けると、自社側からは見えにくい課題が見つかることがあります。
ここで重要なのは、候補者の要望をすべて受け入れることではありません。
自社が大切にしたい採用基準や選考方針は保ちながら、不要な負担や分かりにくさを減らしていくことです。
応募数が少ない会社にとって、母集団形成はもちろん重要です。
しかし、応募を一人増やすことだけが採用改善ではありません。
すでに応募してくれた一人が、途中で余計な理由によって離れないようにすることも、同じくらい重要な改善です。
選考体験を磨くことは、応募者を無理に入社へ導くことではありません。
企業が候補者を見極めるのと同じように、候補者にも企業を正しく見極めてもらうこと。
その結果として、お互いに納得して選べる確率を高めることです。
応募者が少ないときほど、「もっと集めるにはどうするか」だけでなく、「今来てくれている人に、私たちはどんな選考体験を渡しているか」と問い直してみる。その視点が、採用課題を一段細かく捉えるきっかけになるかもしれません。
株式会社カラビナでも、内定者調査や辞退者調査などの取り組みの実績がございます。
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