BtoB企業でも、ブランディングに取り組む企業は増えています。
採用競争の変化や、比較検討の長期化、価格以外で選ばれる必要性などを背景に、「自社らしさ」を整理しようとする動きは自然な流れとも言えます。
一方で、実際には「思ったほど変化が起きない」という声も少なくありません。
・コーポレートサイトを刷新した。
・ロゴやタグラインを見直した。
・採用広報を強化した。
それでも、営業現場の反応が変わらない。
応募者の質が変わった実感がない。
社内でも、言葉が浸透している感じがしない。
こうした状況では、「もっと発信量を増やすべきなのか」「表現を変えるべきなのか」という話になりがちです。
ただ、うまくいかない理由は、発信の量やデザイン以前のところにある場合があります。
ここでは、BtoB企業のブランディングで起きやすい5つのつまずきを整理しながら、何を見直すべきなのかを考えていきます。
「認知を増やすこと」が目的になっている
BtoB企業のブランディングでは、「まず知ってもらわないと始まらない」という話がよく出てきます。
もちろん、認知は必要です。
ただ、認知そのものを目的にしてしまうと、発信の軸が曖昧になりやすくなります。
たとえば、
・SNS更新を続ける
・動画を増やす
・広告を出す
・展示会を増やす
といった施策自体は増えていく一方で、「何を印象として残したいのか」が整理されないまま進むケースがあります。
BtoBでは、すぐに購買が起きることは多くありません。
比較検討期間も長く、意思決定者も複数いるため、「知っている会社」になるだけでは不十分です。
むしろ重要なのは、
・どんな思想で事業をしているのか
・なぜその会社が存在しているのか
・他社と何が違うのか
が、接点ごとに矛盾なく伝わっているかです。
認知は結果として広がることはありますが、先に「どんな印象を形成したいか」がないと、情報量だけが増えていく状態になりやすくなります。
「強み」が機能やスペックだけになっている
BtoB企業では、技術力や品質を強みとして打ち出すことが多くあります。
それ自体は自然なことです。
ただ、業界内で比較したとき、多くの企業が似たような表現になっているケースも少なくありません。
高品質、短納期、柔軟対応、ワンストップ、豊富な実績といった言葉は、一定の安心感にはつながります。
一方で、それだけでは「なぜこの会社なのか」が見えづらくなることがあります。
特にBtoBでは、商品だけでなく「一緒に仕事を進める相手として信頼できるか」が重視されます。
だからこそ、
・どんな判断基準を持っている会社なのか
・どんな場面で力を発揮するのか
・どんな顧客との相性が良いのか
まで含めて整理されている企業の方が、印象が残りやすくなります。
逆に言えば、「誰にでも合う会社」に見せようとすると、特徴が薄くなっていくこともあります。
強みを整理する際は、「優れている点」を並べるだけでなく、「どんな価値観で仕事をしているか」まで含めて考える必要があります。
社外向けの言葉と、社内の実感がズレている
ブランディングでは、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やタグラインを整理する企業も増えています。
ただ、その言葉が現場の感覚と離れてしまうケースもあります。
たとえば、
・現場では忙しすぎて理念どころではない
・部署によって仕事の進め方が違いすぎる
・採用では理想像を語っているが、実態とギャップがある
といった状態です。
このズレが大きくなると、ブランディングは「掲げるもの」にはなっても、「使われるもの」になりません。
特にBtoB企業は、営業・技術・製造・サポートなど、多様な部門が連携して価値をつくっています。
そのため、一部の部署だけで作られた言葉は、現場で機能しにくいことがあります。
重要なのは、綺麗な言葉をつくることだけではなく、
・社内でどんな会話が起きているか
・実際にどんな判断が評価されているか
・現場がどんな誇りを持っているか
を拾い上げながら整理することです。
ブランディングは、「理想を掲げる作業」というより、「すでに存在している価値を見つけ直す作業」に近い部分があります。
ブランディングを“制作物”として扱っている
BtoB企業では、ブランディングの起点が「サイトリニューアル」や「会社案内制作」になることも多くあります。
もちろん、見せ方を整えることは必要です。
ただ、本来のブランディングは、制作物単体を指すものではありません。
たとえば、同じ会社でも、
・営業資料
・採用サイト
・面接
・展示会
・問い合わせ対応
など、接点ごとに印象は積み重なっています。
そのため、サイトだけ整っていても、営業現場との温度差が大きいと、ブランドとしての一貫性は生まれにくくなります。
逆に、デザインが派手ではなくても、
・営業の話し方
・提案時の考え方
・問い合わせ対応
・社内コミュニケーション
に共通した価値観が見える企業は、印象として強く残ります。
BtoBでは特に、「長く付き合える会社か」が見られています。
だからこそ、ブランディングを“制作物の改善”だけで終わらせず、「会社としてどんな体験を提供しているか」で考える必要があります。
「誰に選ばれたいか」が曖昧になっている
ブランディングでは、「多くの人に良く見られたい」という意識が強くなることがあります。
ただ、BtoBでは、対象が広すぎると、かえって伝わりにくくなることがあります。
たとえば、
・どんな顧客と相性が良いのか
・どんな課題に強いのか
・どんな価値観の会社と協働したいのか
が曖昧だと、表現も抽象的になりやすくなり、結果として、「悪くはないけど印象に残らない」という状態になることがあります。
一方で、選ばれているBtoB企業は、自社の得意領域や考え方を比較的明確に持っています。
それは必ずしも「ニッチである」という意味ではありません。
むしろ、
どんな期待には応えられるのか、どんな依頼には向いていないのかを整理できているからこそ、判断しやすくなっています。
ブランディングは、「よく見せること」ではなく、「理解されやすくすること」に近いものかもしれません。
ブランディングは、“整理”の側面が大きい
BtoB企業のブランディングでは、発信やデザインに目が向きやすくなります。
ただ、実際にはその前段階として、
・自社は何を大切にしているのか
・どんな相手に価値を出せるのか
・どんな印象を持たれたいのか
を整理する工程の方が、長く重要になることがあります。
また、その整理は、広報だけで完結するものでもありません。
事業、営業、採用、組織文化など、さまざまな要素がつながっているからこそ、表面的な表現変更だけでは変化が起きにくい場面もあります。
だからこそ、「何を発信するか」だけでなく、「何を整理できていないのか」を見直すことが、ブランディングを考える入り口になることがあります。
株式会社カラビナは、企業ブランディングや採用ブランディングにおいて、表現制作だけではなく、事業・組織・現場の声を整理しながら、企業らしさの言語化や発信設計をご支援しています。
