インナーブランディングの進め方
ではインナーブランディングは、実際にどのような手順に沿って進めるのが良いのでしょうか。その企業の置かれている状況によって、必要な進め方は千差万別です。ここでは、あくまで基本的な流れを一例としてご紹介します。
1. 自社現状分析
まず、課題を持たれている経営者の方々への丁寧なヒアリングが必須です。第三者のコンサルティングによって、自社では気づきにくい課題や、他にはない自社の強みなどにも気付けることがあります。また、経営者の方々の「なんとなくここが問題であると感じる」を、定量&定性的に捉えるため、社内でアンケートやグループインタビューなどを実施し、課題を明確にします。例えば「創業メンバーに近い社員と新入社員では、ロイヤリティに大きな差がある」といった可能性に備え、職種×職歴で社員をグループ分けして調査する、などの方法が考えられます。
2. 活動内容・方向性の検討
1で現状を定量&定性的に分析した結果を元に、何が根本的な原因か?を明確化していきます。現存する企業理念やミッション自体は魅力的だが、社内での浸透度が低いといった結果もあれば、そもそも理念やミッション自体をリブランディングする必要がある、という結論も考えられます。社員たちの実情を正確に捉えた、地に足のついた分析を行い、問題の根本を見誤らないようにすることが肝要です。
3. アクション設計(タスク・スケジュールの策定)
2で明確になった根本原因について、「いつまでに」「何の目的で」「何をどのように実施する」を策定していきます。自社の状況によって、「まずは行動指針を明確に策定し、いち早く現場に装着する」が優先される場合もあれば、「経営層全員が納得のいくブランドコアを、腰を据えて作り直す」ということが優先される場合もあります。現実的かつ効果の高いスコープを定め、タスクとスケジュールに落とし込んだアクションプランを設計します。
4. アクション実行
3で設計したアクションプランの通りに、施策を実行していきます。ブランドそのものを練り直す場合、経営層のみ参加する合宿などのアクションも考えられます。具体策については、次の項目の「具体例・アウトプット」も参考にご覧ください。
5. 振り返り、定着度の評価
アクションを実行した後、いくつかの指標を元に、実際にインナーブランディング施策がうまく機能したかを測定します。社員向けのサーベイのように短期間で効果の振り返りが可能な指標から、「離職率」のように、中長期的に計測しなければ改善されたか評価できない指標も考えられます。「アクションを実行しただけで満足する」といったことにならないよう、必ず振り返りや定量&定性評価を行い、ブランディングが機能しているのかを検証しましょう。
インナーブランディングの具体例・アウトプット
インナーブランディングの具体的な実践には、どのようなものがあるでしょうか?あくまで例ですが、下記のような成果物(アウトプット)が考えられます。
研修
入社時の新人研修などで、理念・ビジョン・ミッション、企業が成し遂げたい世界観などを伝えます。これは場合によってはアルバイトやパートなどのスタッフにも適用され、現場の業務における行動の指針となります。
アワード
理念・ミッションなどに合致した取り組みを表彰する制度です。営業成績などとは別の指標として、その会社「らしさ」を体現したような取り組みを積極的に評価することで、理念・ミッションなどの理解浸透を高め、現場での行動をイメージしやすくします。
ムービー・イベント
社員総会などで、経営者からのメッセージを活用しながら、会社の理念やビジョンを分かりやすく動画で伝えます。単に情報を伝えるだけではなく、社員が理念やビジョンについて共に考え、参加する、イベント形式の総会を開催する企業も増えています。社員の一体感を高めながら、会社や組織に対する愛着や理解を深めることができます。
社内ポータルサイト・社内報
経営層からのメッセージや、社員の取り組みを「早く・多く・深く」伝えることができるのがポータルサイトや社内報です。社員総会や研修は年に1、2回程度しか開催できませんが、ポータルサイトや社内報であれば、即時性や網羅性にも期待ができます。社員が登場する企画を立てるなど、身近に感じられる方法でインナーブランディングを実践できます。
理念コンセプトブック
理念・ミッション・ビジョンなどを一つにまとめ、物語を付与したり、図式化したりしながらわかりやすく伝えるためのブックです。社員が業務中も側に置いておけるよう、手に取りやすいサイズや判型で作られることが多いです。
クレドカード
コンセプトブックから、ミッション・ビジョンなどの一部を抜き出した名刺大のカードです。社員が業務中などにいつでも参照し、行動指針などを確認できるよう小さなカード型にします。
アクションディクショナリー
理念やビジョンを具体的な行動に落とした、アクション事例集です。「考え方はわかったけど、こういう場面では具体的にどうすればいいの?」という社員の疑問に答える、実践的な行動レベルで説明をしたもの、具体的な業務シーンの体験談を集めたものなどがあります。
社内ポスター
理念やブランドの価値を、デザインの力も使い伝わりやすく表現したものです。接触回数が多いオフィスなどに掲示することで、社員への意識定着を図ります。