株式会社カラビナ

バズワード化している、心理的安全性の本当

ホームアイコン画像ブログ一覧バズワード化している、心理的安全性の本当

バズワード化している、心理的安全性の本当

「心理的安全性」という言葉は、ここ数年で一気に広まりました。

採用ページや会社紹介、マネジメントの文脈でも、当たり前のように使われています。

ただ、その言葉が指している内容は、必ずしも一つではありません。

意見を言いやすい状態を思い浮かべる人もいれば、厳しい指摘をしない関係性を想像する人もいる。

評価の話題を避けることや、衝突を起こさないことが「安全」だと理解されている場面もあります。

同じ言葉が使われていても、前提は揃っていない。

そのズレは、採用メッセージと入社後の体験の差として現れたり、組織づくりの議論が噛み合わなくなる原因になったりします。

本記事では、「心理的安全性」という言葉が、どのような意味で使われ、どこで解釈が分かれやすいのかを整理します。

心理的安全性は、いつから「良いもの」になったのか

心理的安全性という概念自体は、決して新しいものではありません。

組織行動学の分野で知られる エイミー・エドモンドソン によって、「チームの中で対人リスクを取っても罰せられない状態」として整理されてきました。

注目が一気に広がったのは、外資系企業やテック企業の事例が紹介されてからです。

成果を出している組織が重視している概念として語られ、「心理的安全性=強い組織の条件」という文脈で消費されるようになりました。

ここで一つ、前提として押さえておきたい点があります。

心理的安全性は「目的」ではなく、「状態」を表す言葉です。

成果やエンゲージメントの代替ではありません。

この前提が抜け落ちると、「心理的安全性を高めること自体」が目的化し、評価や改善の軸が曖昧になります。

現場で起きやすい、三つのすれ違い

バズワード化した結果、現場ではいくつかの典型的なすれ違いが起きています。

一つ目は、「心理的安全性=優しい職場」という短絡です。

指摘しない、踏み込まない、波風を立てない。

それが安全だと感じる人もいますが、同時に、学習や改善の機会は減っていきます。

二つ目は、「心理的安全性があれば成果が出る」という因果の逆転です。

実際には、役割や期待値、評価基準がある程度明確でないと、安全に意見を出すこと自体が難しくなります。

三つ目は、採用文脈での誤読です。

候補者にとって「心理的安全性が高い」と聞いたときの解釈はさまざまです。

裁量がある環境を想像する人もいれば、競争の少ない環境を思い浮かべる人もいます。

言葉だけが一人歩きすると、意図しない期待を生みやすくなります。

「高い・低い」で語らないための整理軸

心理的安全性は、単純に高低で評価できるものではありません。

少なくとも、次のような軸を分けて考える必要があります。

・誰に対して安全なのか(上司・同僚・チーム外)

・何を言ってもよいのか(意見・失敗・違和感・評価への異議)

・どこまで許容されるのか(言うことと、行動することの境界)

これらが言語化されないまま「大切にしています」とだけ伝えると、解釈は受け手任せになります。

採用や組織づくりの場面では、「心理的安全性があるか」ではなく、「どの範囲で、どんな安全が担保されているのか」を分解して示せているかが、判断材料になります。

言葉を使う前に、確認しておきたいこと

心理的安全性という言葉を使うこと自体が悪いわけではありません。

ただし、その前に確認しておきたい点があります。

・自社の現場では、どんな発言が実際に歓迎されているのか

・言いにくいことを言った人が、その後どう扱われているのか

・採用メッセージと、入社後の体験にズレはないか

これらを整理せずに言葉だけを掲げると、期待とのギャップが広がります。

逆に、すべてを言語化しきれなくても、「何を含み、何を含まないのか」が整理されていれば、読み手は自分で判断できます。

心理的安全性は、組織の姿勢を一言で説明する便利な言葉ではありません。

状況を単純化しすぎないための注意が、必要な概念です。

株式会社カラビナは、組織や現場へのヒアリングを通して、企業ごとの状況に即した組織のあり方や考え方を整理し、判断材料として提示しています。

本記事の内容に関心を持たれた場合は、ぜひお問い合わせください。

記事一覧へ

新着記事