「現場で活躍できる人を採りたい」
「カルチャーフィットを重視している」
採用の文脈では、よく聞く言葉です。
一方で、面接が進むにつれて、
「なぜこの人が通過したのか分からない」
「経営の期待と、面接官の評価が噛み合っていない気がする」
といった違和感が、現場や人事の間に残ることも少なくありません。
採用方針は共有されているはずなのに、判断の場面になると、基準が揺れているように見える。
その原因を「面接官の経験不足」や「すり合わせ不足」として片づけてしまうと、構造的なずれは残ったままになります。
本記事では、経営者と面接官の視点が、どこで・なぜずれやすいのかを整理し、そのずれが採用判断にどう影響するのかを、分解していきます。
ずれているのは「意見」ではなく「視点」かもしれない
採用の場で起きる食い違いは、意見の対立というより、見ているレイヤーの違いから生じることが多くあります。
経営者は、
・事業の持続性
・中長期の組織構造
・将来の役割拡張
といった時間軸で人を見ています。
一方、面接官は、
・現場での即戦力性
・チームとの相性
・目の前の業務への適応
といった現在進行形の課題を前提に判断します。
どちらが正しい、という話ではありません。
ただ、前提にしている問いが違う状態で評価を重ねると、最終的な判断に違和感が残りやすくなります。
経営者視点と面接官視点は、どこが違うのか
整理すると、両者の視点には次のような差があります。
経営者の視点は、「構造」に近いです。
・この人材が入ることで、組織はどう変わるか
・3年後、5年後にどんな役割を担っているか
・今いない人材タイプを補完できるか
他方、面接官の視点は、「運用」に近いです。
・今のチームでうまく回るか
・既存メンバーとの摩擦は少ないか
・教えるコストはどれくらいか
この違いが整理されないまま、「カルチャーフィット」や「ポテンシャル」といった言葉だけが共有されると、解釈は面接官ごとに分かれていきます。
結果として、同じ候補者を見ても評価が割れ、「なぜその判断になったのか」が言語化されないまま採用が進むことになります。
ずれを生むポイントはどこにあるか
視点のずれは、主に三つのポイントで表面化します。
一つ目は、評価軸が言葉だけで共有されている場合。
「自走できる」「主体性がある」といった表現は便利ですが、具体的な行動レベルに落ちていないと、判断基準として機能しません。
二つ目は、経営の意図が背景ごと伝わっていない場合。
なぜ今その人物像が必要なのか、事業や組織のどの課題と紐づいているのか。
この文脈が抜けると、面接官は現場最適の判断に寄ります。
三つ目は、面接官の役割定義が曖昧な場合。
「見極める」のか、「推薦する」のか、「懸念を出す」のか。
役割が整理されていないと、評価の粒度も方向も揃いません。
これらは、能力や熱意の問題ではなく、設計の問題です。
視点を揃えるのではなく、ずれを前提に扱う
経営者と面接官の視点を、完全に一致させることは現実的ではありません。
むしろ、ずれがあること自体は自然です。
重要なのは、
・どこにずれが生まれやすいのか
・そのずれを、どう判断材料として扱うのか
を事前に整理しておくことです。
評価基準を細かく決めることよりも、
「この判断は、どの視点からのものか」を言語化できる状態をつくる。
それによって、採用は「感覚のすり合わせ」から「構造を理解した判断」に近づいていきます。
読み手自身の組織では、今、どの視点が強く、どの視点が置き去りになっているでしょうか。
その問いを持ち帰れるかどうかが、次の一手を決める材料になります。
株式会社カラビナは、経営と現場の視点が交差する採用判断を、立場の異なる方へのインタビューなどを通じてフラットに分析し、構造的に整理する支援を行っています。
