採用の話題になると、「自社の強みは面接で伝えている」「現場の面接官が話せば、会社の良さは自然と出てくる」という前提が、暗黙の了解として置かれていることがあります。
あらためて確認されることは少なく、問題として扱われることも多くありません。
ただ、面接の内容を振り返ったり、選考後の求職者の反応を伺ったりすると、別の景色が見えてくることがあります。
面接官ごとに、会社の説明の切り口が微妙に違う。
同じ質問をしても、返ってくる答えの角度が揃っていない。
その結果、「この会社は結局、何が特徴なのか分からなかった」という印象だけが残る。
本記事では、「自社の強みを言えているかどうか」というテーマを、採用の構造がどう整理されているかという視点から捉え直します。
「自社の強み」は、誰の言葉になっているか
面接官に「御社の強みは何ですか」と聞くと、多くの場合、何らかの答えは返ってきます。
事業の安定性、技術力、風通しの良さ、裁量の大きさ。どれも、企業紹介としてよく使われる言葉です。
ただ、その中身をもう一歩だけ見てみると、個人の経験に強く依存しているケースも少なくありません。
「自分が働いていて感じている良さ」が、そのまま会社全体の強みとして語られている状態です。
それ自体が悪いわけではありませんが、採用の場では一つの問題が生じます。
面接官が変わるたびに、会社像の輪郭が少しずつ変わってしまうことです。
自社の強みが「会社として定義された言葉」なのか、「個人の実感の集合体」なのか。
この違いは、採用活動の安定性に静かに影響します。
強みが曖昧なままでも、採用は進んでしまう
採用活動は、必ずしも論理が整理された状態でなくても進行します。
人手が足りない、募集を止められない、現場が忙しい。そうした事情の中で、面接は回り続けます。
その結果、「強みを明確に言語化しないまま」採用が成立しているケースも多く見られます。
入社後にフィットすれば問題にならず、合わなければ早期離職として処理される。構造としては、成立してしまうのです。
ただし、この状態が続くと、いくつかの兆候が現れます。
求職者の志望動機が浅くなる。
面接での見極め基準が属人的になる。
採用広報や求人票との内容にズレが出始める。
強みが曖昧であること自体よりも、「曖昧なままでも問題が顕在化しにくい」点が、整理を後回しにさせます。
「強みが言えない」のではなく、「整理されていない」
面接官が自社の強みをうまく説明できないとき、それは能力や準備不足の問題として捉えられがちです。
しかし実際には、材料が整理されていないケースが大半です。
事業として何を選び、何を選ばなかったのか。
どの層にとって価値があり、どの層には合わないのか。
競合と比べて、どこが違い、どこは同じなのか。
これらが言語化されていない状態では、面接官は自分の引き出しから話すしかありません。
結果として、話せているようで、会社としての強みは共有されないままになります。
強みは「作る」ものというより、「構造を整理した結果、見えてくる」ものに近い存在です。
判断材料としての「自社の強み」
採用における自社の強みは、相手を口説くための言葉ではありません。
本来は、会社側と求職者側の双方が判断するための材料です。
その材料が整理されていれば、
・誰を採るべきか
・どこで期待値をすり合わせるべきか
・どんな理由で辞退されているのか
といった問いにも、過度な感情や属人性を持ち込まずに向き合えるようになります。
面接官が自社の強みを言えるかどうかは、結果ではなく指標の一つです。
言えない場合、何が不足しているのか。
言えている場合、その言葉はどこまで共有されているのか。
そうした視点を持ち帰るだけでも、採用の見え方は少し変わります。
株式会社カラビナは、事業・組織・採用の構造整理を通じて、企業ごとの強みが機能する状態をつくるための伴走支援を行っています。
