「うちの強みは、安定性です」
「風通しの良い社風が魅力です」
「若手から裁量を持って働けます」
採用の場面で、こうしたフレーズを見かける機会は少なくありません。
一方で、これらを言語化しようとする過程で、現場から違和感が出てくることもあります。
それは、本当に強みと言えるのか。
他社と何が違うのか。
採用のために“そう言っているだけ”になっていないか。
本記事では、「採用における強み」を無理にひねり出すのではなく、なぜ見つからなくなるのか、どこでズレが生じるのかを整理します。
その上で、強みを判断可能な材料として扱うための視点を提示します。
採用における「強み」は、なぜ曖昧になりやすいのか
採用における強みが見つからない、あるいは自信を持って語れない背景には、いくつかの構造があります。
そのひとつが、「事業の強み」と「採用の強み」を同一視してしまうことです。
事業として評価されている点が、そのまま働く魅力になるとは限りません。
売上規模、業界ポジション、技術力といった要素は、確かに企業の特徴ですが、求職者が判断したいのは「そこで働く自分の状況」です。
もうひとつは、社内での前提が共有されすぎていることです。
日常的に当たり前になっている環境や制度ほど、強みとして認識されにくくなります。
結果として、外に向けた言葉は抽象度が上がり、既視感のある表現に寄っていきます。
強みが曖昧になるのは、魅力がないからではありません。
判断の軸が整理されていない状態で、言葉にしようとしていることが多いのです。
「強み」を探す前に整理すべき比較の視点
採用における強みは、単独では成立しません。
必ず、何かとの比較の中で立ち上がります。
一つは、競合他社との比較です。
同業・同職種・同じ採用ターゲットを想定したとき、条件や環境が“同じに見える部分”と“微妙に違う部分”が存在します。
その差分こそが、強みの候補になります。
もう一つは、社内の役割間での比較です。
経営が語る魅力、現場が感じている価値、採用担当が伝えたいポイント。
これらが一致していない場合、強みは言語として定着しません。
比較とは、優劣を決めるためのものではありません。
どこに違いがあり、どこが同じなのかを把握するための整理です。
この整理を飛ばすと、強みは主観的な印象論に留まります。
強みを「判断材料」に変えるための問い
採用の強みとして機能するかどうかは、それが判断材料として使えるかにかかっています。
たとえば、「裁量がある」という表現。
これは強みにもなり得ますが、同時に不安要素にもなります。
どのフェーズで、どの範囲まで、どんな支援があるのか。
そこまで補足されて初めて、判断に使える情報になります。
重要なのは、魅力的に見せることではありません。
選ぶ・選ばないを判断できる状態にすることです。
強みを検討する際には、「それを聞いた求職者は、何を判断できるか」という問いを置くことで、言葉の精度が変わります。
強みは“決めるもの”ではなく、“残るもの”
採用における強みは、会議で決定した瞬間に完成するものではありません。
整理し、比較し、問いに耐えた結果として残るものです。
すべての企業にとって都合の良い強みは存在しません。
同じ特徴でも、ある人には魅力に、別の人にはリスクに映ります。
だからこそ、断定せず、情報として提示する意味があります。
強みをどう定義するかは、どんな人に来てほしいかを裏側から示す行為でもあります。
その前提に立てば、強みは「作るもの」ではなく、「整理の結果として浮かび上がるもの」と捉え直すことができます。
株式会社カラビナは、採用における強みの整理や言語化を、事業・組織・現場の構造整理から支援しています。
現状の整理や考えの壁打ちといった段階からでも、ぜひご相談ください。
