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ブランディングの意味とは?マーケティングとの違いを解説 Vol.2

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ブランディングの意味とは?マーケティングとの違いを解説 Vol.2

ブランディング戦略の手法や活動方法

ここではブランディングのやり方や手順についてご紹介していきます。ブランディング手法には様々な種類があります。ここでは、その実務に使用するブランディング戦略の構築法や使用するフレームワークやツールの種類、そして、活動の仕方についてご紹介します。

ブランディング戦略を構築する上で重要なのは、その企業や商品の本質を見抜きブランドとして形作っていくことです。そして、その実現のために行うのが、企業や商品に対する内部分析と外部分析です。内部分析では、3Cなどのフレークワークを使い自社の強み競合優位性などを見出します。ただし、内部分析は社内で行うと「客観性」「俯瞰的な他社比較」が難しくなり、強みや特徴の発見を困難にします。多くの企業の内部分析、強み発見を得意としてきたプロフェッショナルを入れることで、新たな角度から自社の強みを見つけることが可能となるのです。

また、外部分析は隣接する市場の特徴やその将来性(伸び代)、脅威となる競合や潜在的な競合の有無、政策や法規制の変化などを先読みし、その進む方向が未来につながっているかを検証するものです。ここでは5フォースなどのフレームワークを行ったり、潜在ターゲットにマーケティングインタビューを行うなどして施策の確からしさを見極めていきます。こうした戦略フェイズを行いながら、徐々にブランドのコアを整理し、基礎となる戦略を確定していきます。

ブランディングコアが確立した後は、クリエイティブフェイズとして、既存の企業イメージや商品イメージと照合しながら、どのようなクリエイティブが良いのか。コンセプトとなるスローガン・タグラインを開発したり、イメージの元となるキービジュアルをデザインするなどし、そのアイデンティティを確立していきます。そして、その後は、このアイデンティティを元に、企業サイト、サービスサイト、ブランド告知広告、Webマーケティング、インナー向けブランドブックやキックオフ資料、動画など適切な媒体に落とし込み社内外に浸透を図っていきます。

  • 企業の本質を見極めるために外部環境・内部環境分析を行い、戦略軸を整理する

  • 戦略のコアを元に、ブランディングイメージの元となるアイデンティティを定義する

  • 定義したブランディングイメージをふさわしい媒体(サイト・広告・PR等)に落とし込む

  • 社内外に向けて発信・浸透を実行する。

内部環境分析で「その本質と差別化できる“らしさ”」を発見する

自社や製品の強みを分析する内部環境分析には様々な手法があります。自社の本質的な強みを丁寧なインタビューにより炙り出す。ものづくりや技術、サービス開発にかけるこだわりや譲れないポイントを把握する。そして、それを競合企業と比較して、どこにエッジが立っているのかを見つけ出していく。使用するフレームワークは3Cなどが有効ですが、大切なことは形式的な3Cだけではなく、いかに細かなこと、一見、小さいと思う事柄もおろそかにせず、テーブルに上げていくかということ。そこから、自社の勝ち方、市場からの期待、独特の風土や空気感など、見えてくるものが多く、ブランディングフェーズが進んでいく度に振り返り、立ち戻っていく地点になるのです。

外部環境分析で、方向性の確からしさを検証する

内部環境分析が一段落したら、視点を変えて外部環境分析を行っていきます。これは市場調査や行政が左右する法規制の変化、グローバルでの変化などを見据えながら、自社が属する業界や所有する商品の将来性を見ていくプロセスです。フレークワークとしては5フォースなどが適切でマクロな視点から、自社の行く末を見ることができます。この環境分析で、進むべき方向性を軌道修正しながら、見えてきた市場環境に内部分析で見つけた、どの強みが活かせそうかなどをすり合わせ、ブランディングの方向性を精査していくのです。

ブランディングイメージの根幹を開発する

内部環境分析・外部環境分析を行い、未来につながる強みを整理した“ブランディングの設計図”が見えたら、次はクリエィティブを企画します。重要なのは、「伝えることで価値向上につながる=What」を特定することです。これはコンセプトワークとも呼ばれるプロセスです。大切なことは、ブランド戦略に則りながらも、他社と差別化でき、ターゲットに魅力に映るコアコンセプト=Whatを発見することです。このプロセスはきちんとクリエイティブの経験を積んだプロフェッショナルのサポートが不可欠です。また、コンセプトが明確になった後は、「トーン&マナー」と呼ばれる世界観=Howの設計が求められます。例えば、同じ缶コーヒーという商材でも、朝シャッキリと目が覚めるというポジションを取りに行くブランディングでは、素直に「モーニング・・・」のようなそのものズバリのネーミングと効果効能がわかりやすいキャッチコピーが求められ、反対に「働く人に寄り添う」という抽象的なポジションを狙ったブランディングでは(このセグメントを狙うプレイヤーが多いため)、凝った広告宣伝やBOSSのようなキャラクタライズ、タレント起用などHowに力を入れた世界観で差別化を図るといったブランド戦略が散見されます。

シャープで的を射たスローガン・魅力あるビジュアルを開発する

コア・コンセプト(=自社の勝ち筋)が整理でき、そのトーン&マナーが見えたら、それをシャープで魅力的な言葉=スローガンに落とし込んでいくことが必要です。スローガンやタグラインと言われる端的な言葉は、キャンペーンの核になり、数年〜数十年に亘って企業ロゴと併用される“重要な役割”を果たします。こうした言葉の代表格が、広告キャンペーンなら「そうだ、京都いこう」や企業タグラインなら、資生堂の「一生も、一瞬も、美しく」などが挙げられます。こうしたコピーは、コンセプトを一言で言い表し、この言葉を核にビジュアルデザインが開発され、ブランディングイメージ=世界観が一気に表出します。また、こうしたキービジュアルを軸に多様なメディアに合う広告デザインを進めることが可能になります。ブランディング構築のプロセスは、戦略策定までがコンサルティング・フェイズとも呼ばれ、やや左脳的でロジカルなプロセスで、コンセプトメイク以降は右脳的・感性的なプロセスであると言われます。ただ、どちらのプロセスも、ロジックと感性を行き来するしなやかな頭脳が求められる専門性の高い工程なのです。

多彩なメディアに向け、クリエイティブを開発する

コンセプトが決まり、メインスローガンやキービジュアルが見えてきたら、以降は、それをどのようなメディアを使って発信していくかを検討・決定していきます。まず、基本的なものとしては自社の企業サイトやサービスサイトへの反映はMUSTと呼べるプロセスです。それ以外にも、社内報や新聞広告、CM、経済誌などの専門誌への掲載。デジタルマーケティングを行なっている場合はデジタルメディアやSNSへの発信などが主なメディアということができます。また、ブランディング構築の過程をPRや採用情報に反映することで、企業イメージが向上したり採用活動がより良くなるといった効果も期待されます。それと同時に、メディアによってもより良く伝わる表現は変わってきます。こちらの考えを発信しやすい、各種の自社メディアや広告媒体は、開発したスローガンやビジュアルを応用することで、適切な表現になっていくでしょう。一方で、SNSやデジタルマーケティング、PRなどは、相手目線に立ちNEWSとして提供することが価値になるので、コンセプトを活かしながらも各メディアのプロの知恵を借りることが重要となります。

社内外に発信・浸透させる

ブランディングのゴールは、構築したブランディングイメージが社内外に浸透していくことです。社内に対しては、企業サイトや採用サイトはもとより様々なインナー向けのメディアで経営トップから発信、さらにそのブランドイメージにふさわしい貢献を表彰したりニュースとして取り上げることでより浸透度が上がっていくはずです。また、社外に対しては、CMや新聞広告などの大型メディアで発信するだけでなく、そのイメージにふさわしい社会貢献活動を行ったり、消費者向けキャンペーンなどを行うことで、企業や商品へのファンを拡大していくことが可能になります。

ブランディングの成功事例

コーヒーの枠を超えるブランディングで成功したスターバックス

シアトルのコーヒーショップに入社した創業者が立ち上げた企業。

大々的なプロモーション活動を行わないにも関わらず、強く良好なブランディングイメージを獲得している企業にスターバックスがあります。スターバックスがCMや広告などのメディアを使うことなく、いかにしてブランディング・イメージを獲得しているかを詳しくみていきましょう。

スターバックスは元々、シアトルで展開するカフェの一つでした。しかし、今の成長を生み出した創業者ハワード・シュルツが、その可能性に惚れ込んで入社。シュルツはさらにミラノのカフェ文化に目覚め、それをアメリカ西海岸で広めようと事業を拡大、現在に至ります。「こだわりのコーヒーショップ」だった同社がグローバル企業へと成長した背景に、自社の定義=経営理念=ブランディングを大きく転換したことが挙げられます。その大きな転換点となるとが、自社をカフェと定義するのではなく「サードプレイス=第三の場所」と再定義したことです。

サードプレイス、新たな定義でカフェの枠を越える。

サードプレイス=第三の場所とは、つまり、第一の場所=我が家、第二の場所=職場や学校に次ぐ、もう一つの居場所と言った意味です。スターバックスがユニークなのは、定義しこだわったのがコーヒーの味ではなく、サードプレイスとしての「空間の価値」「居心地」でした。家でも勤務先でもない、行く必然性のない場所として「考え事をしたり」「くつろいだりできる」空間に価値を見い出したことでスターバックスは単なるコーヒーショップを超えた存在へ成長を遂げました。誰もが望む“まだ見ぬサードプレイスとは何か”。それを社員やパートナーと呼ばれる従業員と考え続ける中で、店内の音楽や心地よく長時間いられるインテリア、独特の接客スタイルといった場づくりの形が見えてき、それがやがて強い顧客基盤となったのです。

支えるのは、パートナー=インナーブランディングの秀逸さ。

サードプレイス=第三の場所とは、つまり、家庭や職場、学校で満たされない“思い”“体験”を提供すること。その実現には、ドリンクの品質や店内の音楽、インテリアと言ったハードだけでなく、コンセプトに似合う接客や“空気づくり”も大切になります。そこでスターバックスが重視しているのが、パートナーと呼ばれる店舗スタッフとの関係性です。スターバックス日本法人の理念にあるValues(=行動指針)には、「私たちは、パートナー、コーヒー、お客様を中心としValuesを日々体現します。」と掲げられ、スターバックスが、お客様よりもコーヒーよりも、パートナー(パートナーは社員ではなく、アルバイト・パートスタッフが主)を大切にしている姿勢が明示されているのです。

非常に簡単ですがスターバックスの取り組みをご紹介しました。改めて、同社の成功ポイントを整理すると、①飲食に閉じず、サードプレイスと自らを定義したことで独自性が高く、拡張性のあるポジションを手に入れたこと、②サードプレイスのコンセプトに則り、ドリンクも店のインテリアも音楽・照明も整え進化させたこと、③サードプレイスを日々、作り進化させていくパートナーを主役にする経営を実現、ミッション・ビジョン・バリュー(経営理念)にも明示したこと、と言ったポイントが挙げられます。

スターバックス、成功の要因は大きく3つ。
  1. 飲食に閉じず、サードプレイスと自らを定義したことで、独自性が高く、拡張性のあるポジショニングを手に入れたこと

  2. サードプレイスのコンセプトに則り、ドリンクも店のインテリアも音楽・照明も整え進化させた。

  3. サードプレイスの実現者であるパートナーを主役にする経営を実現、ミッション・ビジョン・バリューにも明示

事業転換期に、独自ポジションを獲得したエルメス

1837年に馬具工房として創業したエルメス。今や、バッグ、ファッション、ジュエリーなど世界中から憧れられるラグジュアリーブランドとして有名です。そして、エルメスと同じようにハイブランド・ラグジュアリーブランドと並び呼ばれるのが、ルイ・ヴィトン、カルティエ、グッチと言った、元々はファミリービジネスや地場産業からスタートした企業たちです。こうした企業たちが、どのようにブランドとなっていったか、その経緯をエルメスを事例にご紹介したいと思います。

自動車の登場は、大きな経営の転換点。

エルメスは馬具の中でも鞍を中心に、馬にも乗る人にも優しい革製品メーカーとして一定の地位を築いていました。そんなエルメスのロゴマークにある馬と馬車と従者の逸話はあまりにも有名です。そこには“エルメスは最高の品質を用意しますが、それを御すのはお客様です。”というカスタマーファーストの理念と共に、自社=馬具店という狭義にならない自己定義が反映されています。現在は、大きな成功を遂げているかエルメスにも、経営危機に繋がりかねない転換期がありました。それが19世紀末。自動車が登場し馬具市場そのものが急速に縮小していった時代です。エルメスはここで「馬車は自動車に取って代わられるなら、鞍を作る技術を活かして自動車の“旅”に使える鞄を作ろう」と丈夫な鞄を作ることにシフト。そして、創業事業であった馬具のモチーフはスカーフやアクセサリーと言った、その後の商品に重要なアイコンとして使われるようになりました。

マーケティング視点でも優れたブランド戦略

多くの人を魅了するブランド企業は経営の分岐点で、このように優れた判断を行い、自らの「競争優位性」を自覚し、それを事業や経営の強みとして昇華していくことが得意です。また、エルメスを代表格とするラグジュアリー・ブランドはマーケティングの観点で見ても、自身のブランドを守りながら、独自のポジションを獲得できるよう戦略立てられていることがわかります。そこでマーケティングに重要な4P(PRODUCT / PRICE / PLACE / PROMOTION)で整理してみましょう。

いうまでもなくPRODUCT=製品は、限りなく高品質であり、こだわりやストーリーがあるもの(職人の技)として知られています。その結果、PRICE=価格も同程度の機能を果たす製品と比べると遥かに高額が設定されています。そして、PLACE=流通チャネルは、エルメス自身がプロデュースした美しい空間、自社店舗を中心にして販売。その店舗も、世界各国の一流ブランドが立ち並ぶような“目抜き通り”に構え、ドアマンがおり、購買体験そのものもラグジュアリーなものとして設計されています。そして、PROMOTIONは、パブリシティを中心にしながら、ハイブランドや富裕層が好んで読むクラスマガジンに、その年・シーズンに見合ったキービジュアルを掲載し、その世界観を伝達しています。

ラグジュアリーブランドの代表格であるエルメスのこれまでについてご説明してきました。中でもマーケティング観点における戦略は、ハイブランド特有のもので他のブランド戦略でも同様のポイントを伺うことができます。

エルメスのブランド戦略のポイント
  1. 馬具から自動車へ、経営危機を事業転換の好機に変えられた。

  2. 自社が何を提供するのか=ブランドのコアを自覚し、守りながら拡張してきた。

  3. ブランド戦略をしっかりとマーケティング4Pに反映し、ラグジュアリーブランドとして成長を遂げた。

ブランディングの使い方

ブランディングを会話の中でどのように使用すればいいのか、その使い方をいくつか見ていきましょう。

1. ブランディングされているから適正価格で販売できている。

ブランディングの最もわかりやすい使い方です。例えば、知名度が高くその品質や内容について一定の理解が深まり固定ファンが多くいるような状況では「商品Aはブランディングされているね。だから、スーパーの店頭で良い場所を確保できている」と言ったように使うことができます。反対に、ブランディングされていない、と言ったケースは、同じくスーパーの棚だとしたら、メジャーなポテトチップスA社に対して、無名な小規模メーカー製のポテトチップスが安売りの籠に並べられA社製品に対して50%以下の価格で売られているような場合に、「無名メーカーの商材で、ブランディングされていないから、低価格で売られている」というふうに使うことができます。

2. これからの時代、企業ブランディングをしっかり行わないと生き残れない。

これは商品ブランディングではなく、企業そのものの方向性を明確にし、競合と比較しどのようなポジショニングをとるかを考えていく際に、わかりやすい使い方・伝え方になります。広報や人事、経営企画、また、自身が経営層である場合に、「自社のブランディングをしっかり行うべき」と提言し、経営そのものを改善する方向にリードすることは重要です。

まとめ

これまでブランディングについて、さまざまな観点からご紹介してきました。ブランディングとは、企業の認知度を正しく向上されるための経営手法の一つであり、顧客と良い信頼関係を築く上で重要度の高いものです。また、ブランディングを行う際は、自社の強み弱みなどの分析がマストであり客観的でロジカルな思考が重要であること。同時に、マーケティングの視点と重ね合わせながら戦略をチューニングする必要があること。ブランド戦略は、魅力的で端的なクリエイティブに昇華することが重要で、このプロセスを通して、広く一般に伝わりやすくなること。同時に、そのクリエイティブを適切なメディアを通して発信する必要があること、などをご紹介してきました。

最後になりましたが、ブランディングは経営戦略そのものであり、理念やミッション・ビジョン・バリュー、そして、企業の社会的使命を代弁するパーパスとも呼応しあうものであること。また、優れたブランディングを企画開発するだけでなく、適切なマネジメントを行うことで永く築いてきたブランド価値を毀損させないようにするなど、継続的にブランドを守り、チューンナップしていくことが大切です。

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