株式会社カラビナ

ミッション、ビジョン、バリューとは?意味や違い、作り方を解説! Vol.2

ホームアイコン画像ブログ一覧ミッション、ビジョン、バリューとは?意味や違い、作り方を解説! Vol.2

ミッション、ビジョン、バリューとは?意味や違い、作り方を解説! Vol.2

MVVの構築方法や浸透方法

ここではMVVの策定の仕方や手順についてご紹介していきます。MVVの策定方法については、様々なアプローチがあり企業の数だけ方法があると言っても過言ではありません。しかし、ここでは、一般的なやり方を軸に置き、その構築法や使用するフレームワークやツールの種類、そして、活動の仕方についてご紹介します。

MVVの策定には、MVVそのものを開発する活動とともに、いかに社員を巻き込み社員にとっての「自分ごと」にしていくか、が重要なポイントになります。もちろん、経営者や経営ボードを中心に、MVVを確定していくのも間違ったプロセスではありません。しかし、そうした開発プロセスの難点は、社員にとっての腹落ちが弱いものになりやすい点です。どのような開発プロセスを踏むのが適切なのか、事業ステージや規模などによっても変わってきますので、以降ではいくつか開発のスタイルをご紹介していきたいと思います。

MVVの開発で大切なのは、その企業が「何をしたいか」「社会に何を成し遂げたいか」を明確にすることです。しかし、企業によっては、それが明確になっていなかったり、創業から歴史を重ねて当初の思いがぼやけてしまっていたり、時代に通用しなくなっているケースもよくあります。そうした際に行うのが、自社の強みや弱みを整理するワークショップです。この場合は、3C分析やSWOT分析などを用いて、一旦は論理的に整理して、自社を客観視してみることをお勧めします。とは言え、MVVはマーケティング戦略とは異なり、企業の「意志」が重要ですので、こうした分析の結果にこだわり過ぎず企業が本来、何をしたいのか、どの社会問題を解決したいのかと、自社の中に眠った「思い」を探り出すことが重要です。

その際に行うのが、その企業の事業・サービスが関わる市場の将来性を見つめたり、社会全体の変化を探る「未来ワーク」などをしたりして、10年先、50年先の視点から「自社がどこへいくべきか」を探り出していくことや「次世代リーダーワーク」を通して、未来を担う社員の中から、「未来のありたい姿」を炙り出していくケースがあります。こうしたプロセスや自社の強み弱みなどの客観的な視点を入れながらも、最終的に自社の目指すビジョンやミッションの原型を整理し関係者での合意形成を行います。

そして、この合意が取れた後は、ミッションやビジョンをより伝わりやすい言葉として言語化したり、その実現に必要な行動指針やスタンスを言語化するプロセスに移り、ミッション、ビジョン、バリューが形作られていきます。

  • 経営陣だけでなくワークショップなどを通して社員を巻き込み、当事者意識を高めることが大切

  • 自社の「独自性」を炙り出すために3C分析などを用いることも有効

  • 客観的分析だけに頼らず、自社が「どうしたいか」「社会課題の何を解決したいか」など意志を明確にすることが重要

  • 一方で、目指す方向の市場性や将来性をしっかり見極めることも重要

3C分析やSWOT分析などを使い企業の強み弱みを棚卸しする

自社の強みや独自性を客観的に把握するために、競合との関係性で自社を見つめ直す3C分析やSWOT分析などの手法があります。また、それらの分析の前に改めて自社の本質的な強みを丁寧なインタビューによって炙り出す。ものづくりや技術、サービス開発にかけるこだわりや譲れないポイントを把握する。といったプロセスも重要になるでしょう。使用するフレームワークは3Cなどが有効ですが、大切なことは形式的な3Cだけではなく、いかに細かなこと、一見、小さいと思う事柄もおろそかにせず、テーブルに上げていくかということ。そこから、自社の勝ち方、市場からの期待、独特の風土や空気感など、見えてくるものも多いのです。

自社の「意志」を改めて問い直す

MVVの作成においては、客観的な分析はあくまで基礎となる情報の一つに過ぎません。何しろミッション、ビジョンは未来を描くもの。現在の自社の状態にこだわり過ぎず、その強みや特徴があるからこそ、未来の社会に何ができるのか、何を成し遂げたいのかを議論していく必要があります。意志のあぶり出し方としては、経営者の思いを引き出すインタビューはもちろんですが、基幹社員(事業部長や役員クラス)が捉えている自社への期待や「ありたい姿」を引き出すインタビューやワークショップなどのほか、30歳前後の若手社員=次世代リーダーなどを対象にしたワークショップも有効です。また、こうしたワークショップは外部のプロフェッショナルを起用し、企画・設計から入ってもらうことで自社だけでは辿り着けない観点が見つかることも多くおすすめです。

ミッションの将来性を検証する

こうして見つけ出してきたミッションやビジョンの方向性や要素を元にぜひ、行って欲しいのが、「目指すベクトル」の将来性や市場価値についての検証です。社内では盛り上がり合意が取れているが、10年20年の目線で見たときに、市場そのものが存在しなくなっていたり、代替するテクノロジーによって縮小している可能性はないのか。また、結果的に同業ならどこでも語れるようなミッション・ビジョンになってしまい客観的に見たときに、「その会社である必要性が見えない」「あまり価値が感じられない」状態になっているのではないかなど、一度、冷静にミッション・ビジョンの内容を検証してみることが大切です。ミッション・ビジョンは、決して「掛け声」ではなく、企業が進むべき道を指し示す指針になる言葉です。言葉としての心地よさ、パワーだけでなく、経営戦略や数年後にどのような売上規模、収益を目指すのかなど数値的な戦略も側におき、その内容を検討することが必要です。

要素を元にして人々をモチベートできる言葉にする

ミッション・ビジョンの要素や方向性が固まり、経営戦略との整合性も検証できた段階で、行っていくのが、言語化です。言葉の専門家ではない企業がMVVの開発を行う場合、陥りがちなのが固くビジネス用語だらけの言葉になってしまい魅力的に見えないことや社内でしかわからないような独自の言葉遣いになってしまう点です。こうしたミッション・ビジョンの問題は、主に社外から見た際に、その企業の品質が下がってしまい、“安っぽく”感じられたり、業界の中で本来の立ち位置よりも“格下”のような存在に見えてしまう点です。これは、MVV上の課題というよりは、企業としての見え方=企業ブランドを傷つけてしまうという側面の課題です。こうした残念な結果にならないためには、MVV開発の経験の豊かなコピーライターやコンサルタントなどに依頼して、質感の高い言葉に落とし込むことが必要です。また、このように優れた言葉としてミッション・ビジョンを開発しておくことで、採用やインナーコミュニケーションに寄与するなどの効果も考えられます。

自社サイトを基本にしてMVVを発信する

MVVの開発が終了し、言語化までがオーソライズできたら、必ず自社サイトに理念のコーナーを作り、MVVを掲載していきましょう。文字や図形を用いて理念体系を整理するのはMUST。可能であれば、そのミッションやビジョンをイメージしやすくなるストーリーを動画やイメージビジュアルを用いたスライドショーで展開させたり、経営者の言葉として補完したりするのも良いでしょう。また、社内に向けては、MVVの浸透ポスターや、その価値をより具体的に落とし込んだポスターやビジョンブックなどを掲載、配布することで社員の中でミッション・ビジョンを達成することへの憧れや意識づけが行われていきます。

バリューの活用で、社員の行動の質を向上させる

MVVの取り組みは、ミッション、ビジョン、バリューを開発し、社内外に発表、その具体的イメージを発信するなどのP R活動だけにとどまりません。MVVの本来の役割は、なんといっても企業力の向上です。目指すミッション・ビジョンを実現する企業になるために最も具体的な一歩はなんといっても社員の行動の質の向上です。そのために活用するのが、行動指針の役割であるバリューの有効活用です。具体的には月に一度や四半期に1度程度にMVVイベントを開催し、そこで求めるバリューを実現している社員を表彰したり、その優れた行動をナレッジとして発表させることが重要です。「褒められる」ことを通して、当事者である表彰者の行動を強化するだけでなく、その優れた行動やナレッジが多くの社員に伝播することで、社員全体の行動の質上げにつながっていきます。これはあくまでも一例ですが、MVVは、このようにして実際の企業活動の中に落とし込むことで「生きたもの」になり、その理念が目指す姿により早く近づく状態になるのです。

MVVの活用事例

ビジョンを経営戦略にしっかり落とし込めているリクルート

創業時から「経営者をつくる」を理念においた江副浩正。

就職情報事業で創業し、現在も次々と新たな事業をリリースしていくリクルート。その強さの秘密は、何よりも創業時から続く理念経営=ビジョン経営にあります。日本有数の起業家と言われるようになったリクルート創業者の江副浩正が、リクルートの前身企業を創業したのは、1960年。当時は、20代の青年が会社を起こすなどとは考えられない時代でした。そのため、江副は「自分一人が企業の方向性を決めるのではなく、社員が全員、経営者の意識を持ち、高い当事者意識で関わる企業にしたい」と考え、“全員経営者主義”を打ち出しました。若く経験の少ない一青年だったからこその、全員が経営者でなければ会社は潰れてしまう、という危機意識から生まれた理念は、グローバル企業となった現在のリクルートにも、その姿を変えつつも受け継がれているのです。

キックオフ、Will-Can-Must、アワード、3つのエンジンで理念を回し続ける。

リクルートの理念は、リクルート事件、そして、何度かの経営者の交代のために、刷新され現在へと続いています。でも、そのコアにあるのは、「顧客や経営への当事者意識」と「経営者マインドで新しい価値を創り続けること」。その表現手法は時代に合わせて変わりながら、そこに宿る精神を経営へと具体的に落とし込んでいく仕組みが、企業からのメッセージであるキックオフと、個人のキャリア業績と結びつける「Will-Can-Mustマネジメント」と優秀社員を表彰する「アワード」の3つのエンジンです。リクルートでは期初に経営理念をその年の経営目標へと還元、“今年はどのような価値を市場に発揮するか”を定義づけるキックオフを大型の会場などで発表します(現在はオンラインイベントに変化)。そして、その目標を部門や部署ごとに分配して、業務に向き合います。また、理念や経営目標を個人と紐づけるために「Will-Can-Mustマネジメント」があり、マネージャーと面談をして、その期に自分はどのようにキャリア開発を行うかを考えさせ具現化のサポートを行います。そして、年間に4回程度(部内などでは月次)で優秀事例を発表するコンテストがあり、部門での優秀者などは公の場で自分の事例を発表するなど華やかな場が用意されています。リクルートではこのようにMVVを単なるMVVとして、「飾りもの」にせず実際の日々の企業活動の中に入れ込むことで理念の浸透と具現化、その理念をもとにした社員の育成を行っているのです。

リクルート、成功の要因は大きく3つ。
  1. 創業まもなく「社員全員経営主義」を掲げ「MVV経営」を行なってきた

  2. 時代や事業内容の変化に合わせて適宜、MVVを見直し社内外への浸透を図ってきた

  3. 「AWARD」「Will-Can-Must」など、理念と価値行動を紐づける仕組みが息づいている

MVVの使い方

MVVを会話の中でどのように使用すればいいのか、その使い方をいくつか見ていきましょう。

1. MVVが浸透しているから、社員が活躍している。

MVVの最もわかりやすい使い方です。企業イメージが高く、社員が元気だと言われる企業には、その根底に社員からのMVVへの共感の高さという共通点が見られることがあります。つまり、徹底した理念経営ができているということ。自社をよりよくしようと経営に提言する場合など、ベンチマーク企業が優れている理由としてもMVVの浸透をあげることができるでしょう。

2. これからの時代は、しっかりとMVVを策定して企業経営を行うことが重要だ。

これからの時代は、売上や利益目標などの数値目標や業績管理だけでなく、戦略と紐づくMVVを設定することで、企業の進むべき方向性を明確にし、社員やステークホルダーからの共鳴や支援を引き出していくことが必要です。社員との一体感が乏しい、生き生きと働けていないといった課題がある場合に、経営層に提案してみる際などに使いやすい用法です。

まとめ

これまでMVVについて、さまざまな観点からご紹介してきました。MVVは、企業の存在理由を改めて定義し、社員の気持ちを一つにし企業価値を上げていくためになくてはならい経営の重要ピースです。また、MVVを設定する際には、経営者のビジョンや社員のWillが大切である一方で、今の社会情勢、今後の社会の動きを見て戦略的に判断していく思考も必要です。また、業績的な目標を定めた経営戦略とMVVは呼応するべきものではなく、「つくりたい社会」「目指す自社の姿」をMVVで描き、そのK P Iとしての経営戦略=業績という関係であるべきです。また、作成したMVVは、社内イベントや評価制度、表彰システムなどと連動して社内に浸透させ、業績をうむアクションへとつなげていくことが大切です。

記事一覧へ

新着記事