インナーブランディングの導入事例(BtoB企業)
実際にカラビナが手がけた中から、BtoB企業における内外のブランディング事例をご紹介します。
近年、ご依頼でとても多いのが、新たな経営方針を浸透させるためのブランディングです。「インナーブランディングが必要な企業とは」の3つ目にもご紹介しましたが、歴史ある企業が合併などを繰り返し事業内容も変化し、それにより古くから働く社員が持つ自社イメージと、経営が目指す姿にずれが生じる、といった背景があります。そのため、理念の再構築などとセットで、インナーとアウター両ブランディングを依頼されることが多くなっています。
それなら「社内で方針徹底を行えばいいだけなのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、経営層の視点の高い言葉で語られる未来や戦略は、社員には「遠くて具体性のないもの」または「自分には無関係なこと」と受け取られがちです。そこで、もっと早く、社員にポジティブな形で思いを届けたいと、コーポレートブランドそのものの見直しを依頼されるのです。
事業方針の転換により内外にブランディングを行った食品卸B社さま
五大総合商社の一角を成す、企業グループ中核の食品卸売業B社様の事例です。この企業は、旧来の【海外から大規模な仕入れを行い、流通網に乗せる】モデルから、【レストランチェーンや食品スーパーにメニュー提案する】モデルへの事業転換を検討されていました。働き方、営業の仕方だけでなく、「卸」という「法人相手の感覚」から、最終消費者の好みを意識して働く「to C感覚」への意識転換も必要です。インナーブランディングの観点では、社員の方々に、これらの変化をポジティブに受け止めてもらえる企業スローガンが必要でした。
カラビナでは、企業スローガンと理念体系、行動指針をご提案しました。
理念の中には、B社様の特徴でもある、特定の水産業者やメーカー、魚種に縛られず自由に臨機応変に取り扱うという強みを「しなやかさ」という言葉で組み込みました。行動指針には、祖業の遺伝子である「世界の海を探索する冒険者のマインド」を取り入れながら、今の若い主婦や子供たちの感覚に敏感になるための「ミーハーさ」や「トレンド視点」も入れ、5つの要素としてまとめ上げていきました。
実際に策定した企業スローガンがこちらです。
「Freshen Up Next この国のおいしいを世界の海から」
スローガンや、ご提案させて頂いたキービジュアルは、理念体系とセットで社内掲示されています。
インナーブランディングについてよくある疑問Q&A
Q. インナーブランディングを行うのに最適な時期はいつですか?
A. インナーブランディングを行うのに最適な時期は、明確にいつと言うものはなく基本的には必要性を感じた時、とお答えしています。ただ、観点としては、経営者が変わった。経営の考え方を刷新したい。社員のモチベーションやエンゲージメントが低下してきた。企業統合や買収を行なった。などの経営の転換期や大量の採用を行う前に社員の気持ちを一つにしておきたい。など社員と経営の距離を近づけ、より経営の質やスピードを上げていく必要性が生じた時とお考えください。
Q. インナーブランディングをスタートする際に注意すべきポイントはありますか?
A. インナーブランディングを開始する際に注意すべきポイントは、まず、直近に経営の体制変更などがないことです。せっかくインナーブランディングを行なっても、経営者が代わりこれまでの取り組みが無になってしまうと、社員から会社への信頼が損なわれ、それ以降の経営メッセージにも有効性や信頼性を感じにくくなるため、経営の考え方や主となる人物が急激に変わらないか、と言うのは注意したいポイントです。その上で注意したいのは、的確な現状認識です。
インナーブランディングを行うことで経営のどの課題を解決したいのか。社員のエンゲージメントなのか、業績の向上なのか、社内文化や価値観の改善なのか、目的を整理しておくことが必要です。よくあるケースとして「理念が浸透していない」と言う言葉をあげる企業が多いですが、理念の浸透は目的ではなくプロセスです。企業をどのような状態にするために浸透させたいのかを吟味することでやるべき施策も見えやすくなってくると思います。
Q. クレドや理念を作ったものの、社員のエンゲージが上がらないのはなぜですか?
A. クレドや理念、MVVやパーパスなど考え方を言語化したり、それを伝えるムービーなどを作ったりするだけではインナーブランディングの効果は限定的なものになりがちです。こうした理念と社員の行動やスタンスをいかに結びつけていくかがインナーブランディングにおいて重要な観点です。
開発した理念ワードや軸となる考え方をベースにしながら、社員が自分ごと化できるようなワークショップを開いたり、行動指針に近い事例をとり挙げて社内で勉強会を行ったりするなど、理念と現実を結びつける取り組みを地道に行うことで社員が本質を理解し、自らが行動指針を体現することで周囲に認められる。このプロセスを回し続けることで社員の帰属意識やエンゲージメントが上昇していくはずです。
Q. インナーブランディングが浸透しにくい企業に共通点はありますか?
A. インナーブランディングが浸透しにくい企業は、まず浸透のための取り組みに力を割いていない企業や「作っただけで終わってしまっている」企業。そもそも社長などの経営陣が形だけのブランディングに終始し社員から方針が不一致に見えているなどのケースがあります。また、もっと基礎的に社員との信頼関係が築けていない場合や方針がコロコロ変わると思われている、などの要因もあります。また、インナーブランドや理念を構築する際に経営陣だけで内容を決めてしまい、唐突に社員にアナウンスされるといった場合も、社員が置いてきぼりにされ浸透が難しくなることが多いように思います。
Q. インナーブランディングを成功させるために留意するポイントはありますか?
A. インナーブランディングを成功させるには、やはり、根幹となる理念やインナーブランドの開発プロセスに社員を巻き込み、当初から自分ごと化して愛着を持ってもらいながら進めていくことです。
ブランド開発の機会は社員と経営者の対話の場としても絶好の機会であり、将来の経営人材を育成するチャンスにもなります。こうして開発プロセスから巻き込むだけでなく、開発後も社員の印象に残し浸透が進むようなイベントやアワード、社内報などとの連動、評価制度との整合性を合わせるなどして、成功へ近づけていきます。
Q. インナーブランディングの成功まではどれくらいの日数が想定されますか?
A. 成功の定義によりますが、仮にインナーブランディング活動によって何らかの経営上のKPIの向上を目指すとしたら、短くても1−2年程度の時間は見ておいた方がいいでしょう。例えば、ここで期待されるKPIはES(従業員満足度)や経営方針への共感といった指標が現実的です。それを超えて、経営が目指すような理念行動ができる人材が増加したり、理念を体現するような事例が生まれ出すのは、2−5年程度は見ておいた方が良いでしょう。インナーブランドが定着し、自走するようになるにはさらに7−10年程度のスパンを見た上で、途中途中でチューニングしながら、社員との対話を続けていくことが必要です。
Q. インナーブランディングを進める上でのパートナー選びの観点を教えてください。
A. インナーブランディングのコンサルティングは非常に複合的な知見と能力が求められるプロジェクトです。望ましいスキルとしては経営への知見や理解力。数多くの企業の理念経営について語れる。様々な階層へのファシリテーションやインタビューが得意。言語化の際にクリエイティブな表現を構築できる。自身もマネジメントや経営経験があり、企業のステップに応じた浸透策が提案できるなどになります。加えて、周囲に評価制度を構築できる人材や採用や研修のプロ、コーチングやキャリアカウンセラーなどの組織づくりのプロをアサインできるネットワークがあるとより安心して案件を任せることができるでしょう。